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虹蛇
11p
 廊下の、二年六組の教室からは教壇側の入り口に当たる場所の横に机と椅子が出してあって、それが女装カフェの受付件清算のカウンターになっていた。
 天谷と小宮が教室を出ると受付には女子生徒が座っていた。
 彼女は、二人の顔を見ると、にこやかに「あ、小宮君、天谷君、看板持ち? 行ってらっしゃい」と言った。
「うん、行ってくるぜ。客、バンバン呼んでくるからな」
 小宮はブイサインをしながらそう言った。
 そんな小宮の背中に天谷は隠れて何も言わずに俯いている。
 小宮の姿に女子生徒はくすりと笑う。
「あり、天谷君、小宮君の陰に隠れちゃって、人見知りかいな、可愛い。小宮、どうやって天谷君を手なずけたのよ」
 からかう女子生徒に小宮は「ははっ、手なずけるってこいつは犬かよ」と楽しそうにツッコミを入れる。
 女子生徒は小宮の台詞に笑った。
 天谷の方は無反応だ。
「じゃあ、行って来るな。行くぞ、天谷」
 気合を入れて言う小宮に、天谷は「うん」と小さく答えた。
 小宮が歩きだすと天谷は小宮の後に続く。
 去っていく二人に向かって受付の女子生徒が「二人とも、交代の時間までには戻ってきてよねー!」と、大声で叫ぶ。
 小宮は、「分かってる」と、彼女に大きく手を振った。

 歩きながら、小宮が天谷に話しかける。
「お前、すっかり人見知りキャラだな」
 そう言う小宮に天谷はそっけなく「そう?」
と答える。
 小宮はため息をつく。
「お前って、色んな事に無自覚が過ぎるんでないの? 気を付けた方がいいぞ」
「気を付けるって、何に?」
 天谷は首を傾げる。
 小宮は困った顔で「何にでもだよ」と答えた。

 二人はぶらぶらと校内を歩いた。
 文化祭は一般公開もされていて、校内は人で溢れている。
 小宮と天谷はすれ違う人とぶつからない様に注意して歩いた。
 小宮は歩きながら教室で開かれている模擬店や展示、出し物を、ひょいと覗いた。
 天谷は小宮の後ろについて小宮の背中ばかりを見ている。

「天谷、お前、何か気になる出し物とかあるん?」
 訊かれて天谷は「お化け屋敷」と即答した。
 小宮は意外そうな顔をすると、「お前、そういうのが好きな訳?」と聞く。
「うん、好き」
 少し笑顔を見せて言う天谷を横目に見て、小宮は「じゃあ、休憩時間入ったら一緒に行くか」と何げなく言った。
 しかし、その小宮の台詞に天谷は驚いた顔をする。
「え、お前、何なの、その顔。俺と一緒にお化け屋敷行くのが嫌なの?」
 小宮が訊くと、天谷は困った様に「いや、違くって。そういうの、誘われたの、初めてで。誰かと一緒に……とか無かったから、ビックリして」と、そう言って俯いた。
「は、お前、マジか。じゃあ去年の文化祭とかどうしていた訳?」
 小宮の質問に、天谷が「一人でぼんやりしてた」と答えると、小宮はふぅーん、と言ってから「天谷って一人でいるのが好きな訳?」
と聞いた。
「うん、好きだよ」
 大して感がえる事もせずに天谷は答える。
「お一人様ってやつか。ああ、もしかして、今日の文化祭の休憩時間も独りでぼんやりの予定だった?」
「うん、お化け屋敷は興味はあるけど……」
「そか。お化け屋敷、無理には誘わないけど、行きたかったら言えよな」
「うん」
「さてと、看板持ちの任務頑張るとしようぜ」
 小宮は看板を持つ手に力を込めると「女装カフェいかがっすかー」と声を張り上げた。
 天谷は顔を上げて「いかかですかー」と、小さく声えを出しながら小宮の後ろに続いた。


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あきゅろす。
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