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虹蛇
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 これは日下部の見る夢の中。
 青い、青い闇の中で、日下部は、目の前にいる天谷雨喬と日下部の中学の時の同級生、綾弓蝶(アヤユミチョウ)の二人を凝視していた。
 天谷は俯いていて日下部と目を合わせないでいる。
 綾は微笑を浮かべて日下部を見ていた。

 日下部にとって、天谷は高校からの付き合いで、綾は中学の時の同級生だ。

 綾は黒いセーラー服のスカートと黒く長い髪を風になびかせている。
 綾の白い肌が眩しく光っている。
 天谷は高校の制服である紺色のブレザーをピシリと着て、静止している。
 風が吹いているのに制服のシワどころか、髪も動かない。

 天谷も綾も美しい。

 日下部はこれからこの彼と彼女、二人のうちから一人を選ばなければならない。
 なぜ選ばなければならないのか、わからないが、日下部は、選ばなければならない。

 日下部は悩んでる。

 天谷か、綾か。
 綾か、天谷か。
 彼女なのか、彼なのか。
 彼にすべきか、彼女にすべきか。

 日下部の顔は歪んだ。

「ねぇ、日下部くん、私と一緒に遊びましょう」
 悩む日下部を綾が微笑を浮かべて誘う。
 天谷の方は俯いたまま、無言でいる。

 綾の黒く長い髪ががさらりと風になびく。
 天谷の茶色い髪が微妙に揺れた、天谷が少し、顔を上げたからだ。

 日下部は、指先を彷徨わせる。

 綾が微笑む。
「私と一緒に遊びましょうよ、昔みたいに、ねぇ、日下部くん」

 日下部の指が一瞬、綾の方へ向く。

「日下部っ……」
 天谷が小さな声で日下部の名を呼んだ。
 それは途切れ途切れで、耳をすませないと聞こえない、とても小さな、小さな声。

 日下部の指が、天谷に止まる。

 綾は、「ふぅーん」とつまらなそうに言うと、天谷をジッと見た。
 天谷は俯いている。
 綾はしばらく天谷を品定めする様に見て、そして日下部に視線を移す。
「ねぇ、綺麗だけど、この子、男じゃない。後悔することになるわよ」
 無表情でそう言うと、綾は一歩後ずさる。
 日下部は慌てて、「綾!」と声を上げ、綾に手を伸ばす、だが、綾は青い闇に消えていった。
 綾が消えた、その瞬間、日下部の頭に痛みが走る。
 日下部は思わず呻いた。

「おはよう、日下部」
 日下部の目の前に、天谷の綺麗な顔がある。
 天谷はなんだか不機嫌そうだ。
(この痛みは、後悔の痛みか)
 日下部は笑った。
「おはよう」

 ズキズキと痛む日下部の後悔の痛みはしばらく続いた。





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