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虹蛇
5p
 ヤンキーな彼女の話題は日下部のことばかりだった。
「日下部が」
「日下部は」
「日下部って」
 で始まる話しばかりだ。

「なぁ、日下部が……」
「え、また日下部の話し? 他に無いわけ?」
 天谷に言われてヤンキーな彼女は、みるみると頬を赤らめた。
「な、な、何言ってんだよ! たまたまじゃん! もう、からかうなよ!」
 ヤンキーな彼女は耳が痛く鳴るくらいに怒鳴る。
「な、なんで怒るんだよ!」
 天谷はヤンキーな彼女の怒り新党ぶりに戸惑う。
「は、はぁーっ? べべべっ、別に怒ってなんかないよ! 日下部の話しばかりもしてねーし!」
「いや、してるだろ。お前の話し、日下部、日下部、日下部オンリーだろ!」
「はぁ? 違う! 違うっ! ああーっ、もうっ! あ、つーか……そう言えば、さっきから気になってたんだけどさぁ、アンタ、もしかして、あたしの名前、覚えてないんじゃねーの?」
 ヤンキーな彼女が話をすり替えるように図星を突く事を言う。
 天谷は気が動転した。
「はっ、はぁ? そ、そんなことないから! お前、何言ってんの!」
「だって、さっきからアンタ、アタシのこと、お前、お前ってさ、ちっとも名前が出てこないじゃない!」
「え、それは、その、たまたまだよ」
「ふーん、たまたま? じゃあ、アタシの名前、言ってごらんよ!」
 天谷は言葉が出てこない。
 ヤンキーな彼女は呆れている風だった。
「嵐」
「え?」
「アタシの名前。嵐、嵐糸。覚えるんだよ」

 そう言って嵐は天谷にウィンクした。



「おっ、嵐に天谷か、珍しいカップリングだな」
 そう二人に呼びかけたのは小宮だった。
「おっす、小宮」
 嵐が片手を上げて言う。
 天谷も片手を上げて小宮に挨拶した。
「こんなとこで二人でなにやっとるん? 日下部はいないの?」
 小宮は辺りをキョロキョロと見回す。
「あいつはいないよ、小宮、日下部に用事?」
 天谷は、きな粉パンの残りを口に入れようとしながら言う。
「いや、日下部が天谷のこと探してたからさ」
 その台詞を聞いた天谷の片方の眉がピクリと上がる。
「日下部、今、どこにいるの?」
 嵐が小宮に聞く。
「しらんよ。さっき電話入って、天谷見てないかって。天谷、日下部にここにいること連絡してやったら?」そう言って小宮は天谷を見ると、天谷が手に持ったきな粉パンに目を止め「お前、もしや、昼飯、そのパンだけ?」と、きな粉パンに指を指した。
 天谷は首を振った。
「ううん、牛乳もあるよ」

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