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救う時(弦凪・シリアス)

弦角→凪?(かなり凪が黒い。黒凪)
の方針でいきます。
ちなみに弦角は「オウル」か「修羅」と呼びます。
&設定的には凪が墓守に入っちゃった的な感じです
狂ってはいません。
優しく素敵な凪が好きな人にはオススメしません











「おい」

乾いた呼びかけが部屋に響く。

「・・・なんです?」

それに応答する第二者
そこはコンクリートの部屋で、声が気持ち悪いほど反響した。

「俺の経でも、聞かせてやろうか。」
「あれは、不愉快です。遠慮しておきます」

後者の声は、機械のような声だった。

「また可愛いこというな、オウル」

ソファで寛いでいたセミロングの赤髪がギターをもって立ち上がった。

「なあ、もっと楽しもうぜ?ここはお前にとって居心地のいい世界・・・そう、楽園なんだよ」
「ここが楽園ですか。貴方もとうとう狂いましたか」
「はっ・・・狂ってんのはお前だ、オウル」
「はい?」
「この世界にいて、それだけ普通にしてられるんのは、天然記念物だ。ま、それでこそ俺の修羅だがな」

ビン、とギターを弾く。

「その呼び方、やめてもらえませんか」
「やだね。お前は修羅だ。人をぶっ殺してる姿はまじで綺麗だったぜ?」

フフと軽く笑う機械音。
あたりの空気は先ほどと変らず重く苦しく、一つ一つの音が鮮明に部屋に響く程静寂に包まれていた。

「わたしの記憶にはそんな惨たらしいものはありませんね」
「忘れただけだろ」
「そうかもしれませんね」

そんなことはありませんと強く否定されるかと思っていたら、意外な肯定の答えを返してきたオウルに、一瞬不審な空気を感じたが、それも気のせいだと鼻で笑って誤魔化した。

「まあ、お前はコッチの人間だ。精々ファッキンな糞どもを救えや」
「救う?殺すの間違えでは?」
「俺の救いは死だ。人は死んで楽になるんだ。救ってやってるだろ?」

カカカと笑いながらまたギターを弾き始める。

「弦角」
「あ?んだよ」
「貴方は、死が救済だと思ってるんですか」
「何回言わせる気だ。そうだ、死こそが救済だ」
「・・・・やっぱり、狂っていますね」

オウルはそう溜息混じりに言う。
不満そうな顔をして、弦角は演奏をやめる。

「あ、いえ。気にしないでください」
「脳天に風穴開けてやってもいいんだぜ?それも救いだ」

ギターを変形させてチャキ、とオウルの額に照準を合わせる。

「冗談ですよ。あなたが死は救いというなら、それはそれでいいんじゃないんですか?信仰なんて人それぞれですからね」

オウルは全く動揺の色を見せずに淡々とそう言った。

「馬鹿にしてるのか?」
「いえ、そんなことは」

呆れたようで、ギターを下ろす。
そして疲れた調子でソファに腰を下ろした。

「ったく、なんかお前おかしいぞ」
「そうですか?あなたがたくさん薬を打ったからじゃないですか?」
「あ?ああ、そうかもな」

調子が狂うようで、頭を掻きながらタバコを口に銜える弦角。

「煙いですよ」

いちいち行動に文句を付けてくるオウルが無性に腹立たしく感じていた。
普通なら体に風穴開けて一発で救う(正確には殺す)弦角が、このときだけは、オウルにはなぜかそのような行為をしようとはしなかった。



「わたしを殺したいですか?」



不意にわけの分からない質問をしてくる。


「ああ。お前は俺がこの手で救うと決めてるからな。

「そうですか。では、なぜ先ほど殺さなかったのです?貴方なら、躊躇いもなく撃つと思ったのですが」


それを聞かれると顔が強張った。
殺せない、なんてことは口が裂けても言うつもりは無い。


それは、



「・・・聞いてますか?」




思考を遮り、悩む弦角を嘲笑うような一言だ。

「そんな気分じゃねぇんだよ」
「らしくないですね」


また、文句を。腹が立つ、本当に殺してやろうか?
そしてギターに手をかけるが、武器化するまでにはいたらない。



それは、
弦角が、オウルを殺すこと、基救うことを
否定しているかのような思考だ。
死ねば救われる、そう悟ったのは10年前。
あの、東京大震災のときだった。
その確実的な思考は、彼がいまにいたるまで変わったことはない。
でも、これではまるで
オウルが死ぬことを恐れているような、
そんな気がしていた。


「イライラする」
「そうですか」
「なんかしろよ」
「いやですよ」


単調な言葉のキャッチボールにも飽きが来た。


弦角が殺すそのときは、
オウルが腐った偽善者にもどるその瞬間だ。
今はその必要のないほど、彼の理想に近い形をしているのだろう。

彼の理想から遠ざかることがあったら。
そのときは躊躇いはしない。
確実に。
正確に完璧に。




「お前を、救ってやるよ」



彼自身の、手で。




end


初、弦凪小説。
なんか凪弦な気がします・・・・
でもわたしのなかの弦角像は、こんな感じで、
果てしなく凪が好きすぎる設定です。
そして、黒凪はこれからかなりの高確率で出現します。
まだ雰囲気模索中ですので、
始めの方は温かいめで見てあげてください。




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