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Oh!My?Son!?
息子、はじめてのお遣い
「じゃあ、ナツル、シズマ、できる?」
「安心してよ。シズマはオレが守るから」
「ナツルがいれば、平気だよ」
『行って来ます』

心配そうに子供たちを見送る母に手を振り、子供たちは互いの手を握りながら町へと降りて行った。





「さいしょはどこ?」

シズマがメモを眺めているナツルを覗きこむ。
そんなシズマを横目に眺めながら、ナツルはメモに書かれた地図と辺りとをきょろきょろと見比べた。

「この通りの、3番めのお店」
「えっと・・・これ?」

言いながら歩いていたナツルの手をひき、シズマが一軒のお店を指差す。
ナツルはメモに書かれた店名とそれとを見比べ、頷いた。
そのままシズマの手を引きながら店内へと入って行く。

年季の入った店内は、埃やカビの匂いで眉間に皺が寄る。
けれどあの母や父が信頼していて、買い物を任せたような店だ。
しっかりしているのだろうと、店内を物色し始めた。

「ナツル、これ?」
「違う。シズマ、あっちのやつ」
「こっち?」
「うん。それ」

シズマがにこっと笑って手に取ったものには、真っ赤なラベルが貼ってある。
そこには危険物につきだの、取り扱い厳重注意だのと、明らかに危険そうだ。
そんなこと気にもせず、二人はそれを片手にまた店内を歩き回る。

次の棚へと行くと、もうひとつメモに書かれた品を見つけた。
けれどそれは彼らの身長の倍ほどあって、背伸びしても届きそうにない。
辺りを見回してみても、脚立のようなものも見当たらない。
さて、どうしようか。

シズマがナツルへと、首を傾げて見せる。
すると、ナツルははぁっとため息を吐いた。

「めんどくせぇけど、変化でもするか」
「ああ!そっか」

シズマは僕やる!と、挙手して言うと、ナツルに先ほどの商品を手渡して変化した。
煙が消えて現れたのは、十歳は年を取っただろうナツル。
にこにことそれを手に取ると、無邪気にナツルに抱きついた。
ナツルは甘んじてそれを受けながらも、ため息混じりに置くを見つめる。

「ほら、さっさと買っちまおうぜ?次の店、行かなきゃ」
「わかったー」

へらへらと笑いながら、ナツルを抱っこしてレジへと向かう。
ふたつの商品を置くと、置くからのそのそと怪しげな老人が現れた。
その商品を見ると、にやりと口元を吊り上げる。

「お客さん、見る目あるねぇ」
「早く」
「遅い」

老人のお褒めの言葉はあっさりと受け流し、さっさとしろと商品を押し付けた。
それには老人も圧倒されたかのように一瞬だけぽかんとするけれど、またすぐに怪しげな雰囲気を纏う。
魔女みたいな笑い声をあげながら、またおいでなんて見送る老人を無視して変化を解いた二人は歩き出した。

「次は?」
「古書店。次の通りを右」

てくてくと歩いて行く小さな子供。
しばらく歩いていると、目的の店が視界に入ってくる。
シズマの足が少しばかり走り出すと、引っ張られながらナツルも走り出す。
古書店まであと数mと言ったところで、二人は声を掛けられた。

「あら、双子ちゃんじゃない」
「サクラ」
「サクラー」

二人は聞きなれた声に振り返ると、そこには想像どおりに見慣れた人が自分たちを見ている。
自分たちよりずっと背の高い彼女を見上げて名を呼ぶと、彼女はすぐにかがんで目線を合わせてくれた。
そのままきょろきょろと辺りを見回すと、首を傾げる。

「今日はあんたたち、二人だけ?」
「そうだよー」
「お遣い、だってよ」

シズマはにこーっと笑いながら、ナツルはめんどくさそうに答える。
それにへぇなんて返したサクラは、ナツルの持つメモを見てそっかと続けた。
するとぽんっと二人の頭を撫で、立ち上がる。

「じゃ、がんばりなさいね」
「ばいばいサクラー」

ひらひらと手を振って去って行くサクラに、ナツルもにこにこと手を振って別れを告げる。
シズマはそんなナツルの手をぐいっと引っ張ると、少し強引に古書店へと引っ張った。
そんなナツルに首を傾げながらも、店内へと入るとシズマは楽しげにきょろきょろと見回す。

「あれ。あの本、この前、ナツルが読んでたの?」
「どれ?・・・ああ、そうだな」

店内の最も奥、天井ぴったりに聳え立つ本棚の一番上。
先日祖父がくれたものを、シズマと読んでいた本だ。
シズマはすぐギブアップしたけれど。

ふと、その下にどこかで見た題名の本を見つけて、ナツルは首を傾げた。
最近だ、ついさっき見た。
すぐにメモへと視線を戻すと、メモの端っこに小さく書かれている文に入っているのに気付く。あったら買っておいて、と書き添えられた題名だ。

そういう風に書くと言うことは、とてもレアな本なのだろう。
シズマに言って、それも買っておいた。
念の為念の為と、多過ぎるほどの金を持たされていたし、一冊ずつくらい好きな本も買ってしまったのはしょうがないと言うことにしておく。
あの父親の息子なのだから、しょうがないと。

分厚い本を5冊、自分の影に投げ込む。
メモを開くと、どうやら次が最後のようだ。

「シズマ。最後は火影邸」
「えー。少し遠いー」
「本気出すか」
「わーい」

互いに目配せすると、同時に子供たちは消えた。
否、走っている。
ただ、それは上忍くらいはあろうスピードだ。



「こーんにーちはー」

ナツルの間の抜けた声が、火影室に響き渡った。
ぽかんとした顔を上げた五代目火影は、その小さな体を視界に捕らえて、ぽとりと筆を落とす。
それもしょうがないだろう。

子供たちが元気に入ってきたその扉の前には、見張りが立っていたはず。
それどころか、火影邸に入るには入り口の者に止められ、その旨は自分へと伝えられるはずだ。
なのになぜ、何の連絡もなく子供二人がここに居るのか。
その答えは明白だった。
子供たちの後ろに倒れている見張り。
それに、この顔には激しく見覚えがある。

「ナツルにシズマ、か?」
「当たりだよ」
「さすが火影様」

ナツルに褒められているはずなのだが、こうもそう思わせないのは遺伝だろうか。
それともあの、年齢に不釣合いな表情のせいだろうか。
火影は引きつる頬を無理やり笑わせ、用件を問うた。

「そうだった。お使いだったよ、ナツル」
「用件は・・・『例の巻物をこの子たちに渡せ』」

メモを読み上げた途端、火影はピシリと固まる。
次いで錆びかけのロボットのような動きで首を回すと、巻物を握り締めて勢い良くふたりへと向き直った。
大声で驚きを露わにする。
それも予想していたのか、メモを見つめているナツルは口を開いた。
隣でシズマもメモを覗きこむ。

「『抵抗は無駄だ。お前は完全に包囲されている』」
「『両手を上げて三度回り、わんと鳴け』」
「ハァ!?な、何だって?」
「書いてある」
「ね」

にっこりと笑う小さな悪魔。
親よりも何倍も凶悪に見えてくる。
後半、絶対遊んでいるだろうとメモを書いた奴に言ってやりたい。
けど彼らのこと。
きっと何かしらの方法で監視しているに違いない。
どうする、どうする、私!?

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あきゅろす。
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