さなだくんとにおうくん
恋愛幸福論
例えば人は恋をしてる時、好きな人を想っているととても幸せな気分になれるだろう。相手が自分を好きでいてくれるのであれば尚更。けれど俺は、苦しい。真田のことは本当に愛している。これは俺の嘘偽りのない気持ち。真田も俺を愛してくれる。あの大きな優しい手で包んでくれる。だけど俺はそんな綺麗な真田を汚す存在にしかならない。可能性溢れる彼の未来を潰すことしか出来ない。それが悲しい。苦しい。どうして俺は女ではなかったのだろう。女であったならば、彼の隣を堂々と歩けたのに。彼の未来を潰さずに済んだのに。どうして俺は。
「仁王、そんなに自分を責めるな。」
「さ、なだ…」
「俺はお前に未来を潰されたとは思わん。それに俺の方こそ仁王の未来を奪っているな。」
「ちがっ…」
それは違う。真田がいない未来など俺にはいらない。真田が俺に未来をくれたんだ。
「仁王、お前は俺のことが好きなのであろう?」
「うん。」
「ならばもうそれで良いではないか。俺もお前が好きだ。共に居りたいと言う理由はそれだけで十分だろう。」
「真田…さなだ…」
「未来のことなど誰にも分からぬ。俺にもお前にも。ただ訪れるであろう未来の為に今をどう過ごすかは俺達にも分かる。」
「うん…そうじゃね…」
「今はこうして二人で居れることを幸せに思おうではないか。」
真田のその低くて安心できる声が心に響く。髪を撫でる優しい手に不安な気持ちが消し飛ぶようだった。
恋愛幸福論
(今はただ君の隣に居れることが)(幸せ)
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