涙のわけ 謙也
雨と一緒にあなたが涙する原因も流せたらいいのに。そしたら晴れた時、あなたも笑ってくれるでしょう?いつもの少し照れたような笑みを浮かべてくれるでしょう?
「う…なまえ、堪忍な、堪忍…」
「謙也くん…」
私はどうして謙也くんが泣いてるのかわからない。さっきまで一緒に楽しくお喋りをしてただけなのに。だけどたまに謙也くんは暗い顔をする。話してる時だったり、帰ってる時だったり、その時々で何をしてるかは違うけれど不意に、突然に。まるでこの世で一人ぼっちのような顔をする。私はそれが悲しかった。彼は昔からよく笑う人で、その顔はあまりにも彼に似つかわしくないものだったから。
「謙也くん、おもいっきり泣いて。子供みたいにさ、わんわん泣いて。」
「……」
「そしたらさ、明日は笑ってよ。いつもみたいになまえっていいながら、沢山笑ってよ。」
謙也くんは何も言わずにただ泣いていた。私を腕に抱きしめながら。彼の腕の中で私は涙の原因がなくなるといいと雨空に願った。
涙のわけ
(君がいなくなるのが)(ひどく怖いんだ)
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