明日はどこから 9 「お…わったああー…」 ひととおりの作業を終えて窓を見ると、春の綺麗な夕焼けが見えた。 少し目を離した隙に、それはうす紫の夜空に変わっている。不思議なもんだ。 太陽はちっとも動いた素振りを見せないのだから。 …もう夕方かあ。 さて倫は、帰ってくるだろうか。 逆にここに帰ってきたら、昨日、余程の決心でわざわざ私立の寮から出てきたと判断する。 だってそれ以外、考えられない。……生憎、俺の軟弱な頭ではな! そう、余程の。 やっぱり、許容できないほどの、嫌なことがあったんだと思う。 昨晩話してみて分かったのは、あいつは頭が良い人間だってことだ。 そんぐらいは分かる。 というか、俺でも分かるんだから多分超簡単。 言葉に迷いが無い。それでいて、変な説得力がある。…俺がわけの分からんうちに流されてしまったように。 そんな奴がこんな(オンボロ)アパートの知らない腐りかけニートもどきの部屋に転がり込むなんて、まずしないんじゃないかと。 …もしかしたら、そっちの面でかなりの馬鹿かもしれないけど。 しかし、……プライドってやつがあんだろ。あれだけ生意気なんだから。 そうだ。 生意気言いながらやることちゃんとやってたじゃん。 なにそれ、心も男前ってか。 同じ世の中に生まれてきてこの差だぜ、 ほんと…… …結局俺が何を思ってんのかって、そりゃ。 なんとなく、本当になんとなく、 倫に帰ってきてほしい、って。 [*前へ][次へ#] |