明日はどこから 2 「っう…」 五條は俺のワイシャツをブチブチと破くように脱がし、鎖骨から胸の間を手で弄り出した。 いやらしい、なんて表現を今まで使うような場面に遭遇したことはないが、これが、そうなのだろうか。 ただ、途轍も無くくすぐったい。 「ふ…あははははっ、ちょ、五條」 「倫」 「あっごめ、倫っ、それすんごいくすぐったいんだけど!あは、あはははは」 「色気もクソもねぇ発言だな」 「ンなもん元からな…ふ、あははっ」 あ、そっか。 こういうときってこう、艶かしさとか、そういう雰囲気を出すのが大事なんだ。 なるほど、一つ学んだ。ありがとう、倫。 当の本人は呆れた顔をしてふう、と息を吐いた。 悪い、今学んだ。 笑っちゃまずかったな。 と、その途端、馬鹿みたいに開いた口へ舌がねじ込まれる。 手は依然、緩やかに動いたまま。 ん?んん? おお、なんか、変に顔が熱くなってきた。 やっぱりこれは、あれか。 このちょっと苦しい、キスの所為なのか。 でもさっきより、なんか、変。 「ふ…っう、うう、んっ」 「…あ、そーだ。あんた、名前は?」 「え?っ…ん、う」 「いいから教えろ」 お前が口塞いでんだろうが! 自分が喋るときだけ離しやがって。 なに?俺に主導権ゼロなの? マジで俺ナメられてんの? 「た、棚町…っ日和…」 「ひより」 俺からそれを聞くと、倫は口を離して耳元で下の名前を呟いた。 それが、俺には、不思議なことにとっっても恥ずかしく思えたのである。 [*前へ][次へ#] |