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眠り姫に口付けを2
「ねぇ……僕の話聞いてた?」

相手が反応を返してこないことを不振に思ったのか、少年は目を細める。
そんな威圧感たっぷりのこの少年を、七歌は半ば放心状態で見つめた。

学ランの袖についている“風紀”の腕章。
この学校に来て一週間足らずの七歌だが、それでも情報収集は怠っていない。

並盛中風紀委員といえば、この町を取り仕切っているも同然の不良集団。
委員長が恐ろしく強く、群れただけで殺される、というのは有名な話だ。

もしもここで戦いになったとして、私勝てるかな。
ぼんやりとそんなことを思った。

「…ねぇ、聞いてる?」

は、と我に返ってすぐ、ぎょっとする。
目の前、それもお互いの睫毛が触れ合うくらいに近付いた少年の顔。
色んな意味で危険を感じた#七歌#は反射的に離れようと後ずさりして、後頭部をフェンスにぶつけてしまった。

「…あぅ…っ」
「なにしてんの、きみは」

冷たい視線を浴びながら、なんでもないです、と答え、慌てて距離を取る。

「…で、さっきの話の続きだけど。
 ここにいるのは、きみだけ?」
「はい、そうですけど……」
「ふぅん…変だね。
 男の話声が聞こえたはずなんだけど」

男男男。誰のことだろう、と内心首を傾げていると、後ろで鏡が七歌にしか聞こえないような小声で『それって私のことですかね』と呟いた。
そういえばミラさん、男の声だった(ちなみにここで言う『ミラさん』とは鏡のことだ)。

少年はといえば給水タンクの上など、屋上のありとあらゆる場所を念入りに調べている。
両手にはどこから出したのかトンファーが握られていて、七歌は心の中で冷や汗をかいた。

「きみ、本当に一人だったの?」
「え、っと……」
「分かってると思うけど、嘘はつかない方がいいよ」

嘘をつけば恐らく(というか確実に)あのトンファーは飛んでくるだろう。
本当のことを言わなければ命の危険が伴うことも重々承知しているが、鏡と喋ってました、なんて言おうものならそれこそタコ殴りにされそうだ。

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