ジョーカーを引いた?4
霞が銃のハンマーを起こしたので、獄寺は口をつぐむ他ない。
どうするどうする?
冷静に冷静に、そう思えば思うほど頭の中は混乱して、どうすればいいのか分からなくなる。
銃を突きつけられている綱吉はきっと自分を頼ってくれている。
こんな時に力を発揮できなくて、どうして右腕を名乗れよう。
そう思うのに何も閃かず頭に血がのぼるばかりで、獄寺はくわえ煙草を苛立ちから噛み潰した。
「…よし、んじゃそのヤバそうなもんをこっちに渡せ」
「……くそ、」
言われた通りにダイナマイトを霞に手渡す。
悔しいがまだダイナマイトは体の至る所に隠してあるしなんとかなるだろう。
必死になってこのピンチを凌ごうと策略を巡らせる獄寺とは反対に、霞は受け取ったダイナマイトを物珍しげに観察していた。
銃は霞の手でまるでペン回しのような感覚でくるくると踊っており意識はダイナマイトに集中、一見すれば油断しているようにもみえる。
だが獄寺が見る限り、霞には油断しているように見せて隙は一切ない。
それどころか油断しているようにしか見えないこの素振りも場数を踏んだことからくる余裕にさえ思えてくる。
さぁどうすればいい、と獄寺は心の中で舌打ちした。
「……一つ、聞いてもいいですか」
そう言ったのは、意外にもそれまで黙って震えているだけの綱吉だった。
これには獄寺も驚く。
「ん?トイレにでも行きたくなった?」
そう言って茶化す霞だったが、彼も驚いているらしく、目は笑っていなかった。
綱吉は露骨に不愉快そうな表情で顔を上げたが銃が視界に入った瞬間すぐに俯いてしまう。
「そのピストル…本物、ですか?」
「試しに撃ってみるか?
もし本物だったらお前は死ぬんだろうけど。
…言っとくが俺は救急車呼ぶ気ないぜ?」
「てめェ…!」
「もしかして!」
獄寺の声を遮るほどの語気で言い放った綱吉に、霞は目を丸くする。
「俺たちのことも…口封じで殺す気ですか?」
「口封じ…っていうと?」
「お前は、…七歌を、殺したんじゃ、ないの?」
「!てめー、まさか!」
驚いて振り返った獄寺が見た霞#は、笑っていた。
くつくつと、声を絞り出すようにして笑った霞は、しばらくするとさも楽しそうに言う。
「あぁそうだよ」
「てめー!」
「バレたもんは仕方ねーな。
…ったく、聞きたい事もあったのによー」
「…何をだよ」
「ん?七歌と仲良かった奴の名前をな」
「知ってたとしても言うもんか!お前なんかに!」
敵意むきだしの綱吉がそう言って叫んだ瞬間、
「ただいまぁ」
ただでさえ狭い玄関が、もっと狭くなった。
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