魔法が切れる前に1
「おはようございますっ!」
「…今、昼だよ」
昼休みのチャイム、と共に教室を出てこちらに直行する七歌は、だいたいこの時間になると応接室に飛び込んでくる。
七歌の教室はここから遠いところにあるし、走ってここまで来ているようなので問題はない。
欲を言えばもう少し早く着て欲しいのだが。
「はい、お弁当です」
「うん」
弁当を受け取って、早速包みを開ける。
色とりどりのおかずの中で、今日のは一際大きいハンバーグが中央に鎮座していた。
「今日のメインはハンバーグなんですよ」
「…そう」
最近の七歌が作る弁当は、だんだん中身が豪華になっているように思う。
最初からそれなりに豪華だったが、特にここ数日はそれが顕著だ。
母親にでも手伝ってもらっているのか、と聞こうと思ったが、七歌の家庭にそこまで興味もないのでやめておいた。
「じゃあわたしも食べますね」
「……、」
七歌が取り出したのはおにぎりだった。
しかもまだ湯気が立っていて、それが出来て間もないことを主張している。
これには気になったので、率直に聞いてみた。
「それ何?」
「あ、おにぎりです。家庭科の料理で作ったんですよ」
「調理実習?」
聞いてないよ、と恭弥が目で語ると、七歌は慌てた様子で早口にまくし立てる。
「あの、ごめんなさい!わたし…その、いう必要ないかなって思って…!
あ、でもこれからはちゃんと言うようにします!」
「そうして」
言いながらおにぎりをとって口にしてみる。
しゃけおにぎりだった。
おにぎりに上手い下手はあまり関係ないかもしれないが、悪くない、と思う。
「あーっ!食べないで下さい!」
「なんで?」
「これはわたしのお昼ご飯です!」
「そんなのどうでもいいよ。それ頂戴」
「恭弥くんに食べられたらわたしのお昼が!
午後の授業に出られません!」
「出なければいい」
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