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狼と少女2
「こちらです」

階段を一つ降り、三階のとある部屋の前で、草壁が立ち止まった。
応接室、と書いてある。
七歌も、まだ入ったことのない部屋だった。

まぁそれが普通だ。応接室というのは、学校に来た教育委員会のお偉いさんとか父兄の方とか、つまりはお客さんを通す部屋なわけで、一般生徒は掃除当番にでも割り当たらない限りほとんど縁のない場所。

「…なんでここに、雲雀せんぱいがいるんですか?」
「……、とにかく入って下さい」

どうやら聞いてはいけないことだったらしい。

とにかく湧き上がる疑問を胸の奥にしまいこんで、扉をノックする。
「入りなよ」と声が聞こえて、草壁はこくりと頷いた。
とにかく、入るしかない。
腹を決めて、七歌は扉を開けた。

「…う、」

思考回路が停止する。
……なにこの部屋。

部屋の中はむさくるしい男、もといむさくるしいリーゼントの空気で充満していた。
黒の学ランに、左腕には風紀の腕章、というお揃いのスタイル。
間違いなく、これは風紀委員の集会だ。

これから何が始まるのだろうか。
集団リンチでも始める気なら、こちらもあらゆる手を使って逃げなければならない。
ざっと見たところ逃げ場はないので自分で切り開くしかないのだろうが、さっきまで中庭で銃弾の雨から逃げ惑っていた自分にそれができるのかどうか。

「…早くこっちにおいでよ」
「は、はいっ」

そう言われたものの部屋の中は風紀委員でいっぱいで、とても入れたものではない。
どうしようかと悩んでいると、突然富貴委員が道をあけた。

「ほら、おいで」

促されるままに、部屋を進む。
その間風紀委員はずっとこちらを見ていて、よく分からない光景だ、と七歌は思った。
やはり風紀委員は全員がリーゼント頭で、もしかして風紀委員に入るのにリーゼントは不可欠なのかもしれない。
だとしたらなぜ雲雀はリーゼントでないんだろう、自分でやるのは嫌だが見るのは好き、とかそういうノリだろうか。

「…あ、あの……?」

机の目の前に来て、どうするつもりだろうか、と思っていたら、今度は雲雀が座る椅子の隣に立つように指示される。
その通りに動くと、草壁が応接室の扉を閉めた。
本当に何が始まるんだろう、と七歌の混乱は頂点に達する。

と、その時。
突然腕をひかれて、雲雀の膝の上に座らされていた。

「あ…っ」

慌てて離れようとしたが、後ろから腕を回されてしまう。
七歌は恥ずかしさに顔を赤らめ、雲雀はそれを見て満足気に笑う。
二日目と全く同じ状況――だが今回は風紀委員の全員が見ている、という事で恥ずかしさが倍増する。
早く解放してくれ、と心の中で願っていると、ふと頭上から声がかけられた。

「この女が、今日から僕の所有物だから」

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あきゅろす。
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