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四面楚歌



清々しい朝の光を浴びた小鳥たちがさえずり歌いだす頃。
「あ〜っあこがれの〜っ」
おや?
カントーハイスクールの校門からも歌声が聞こえるぞ?
「ポケモンマスタぁに〜っ」
幸せオーラを出す彼の名はサトシ。
つい先日晴れてカスミと恋人同士になった、1年生である。

「えぇ…
サトシ、鼻歌なんて歌ってきもいことこの上ないかも。」
「なんか面白いことがおきそうね。
今日はサトシを観察しましょ!」

りょうかーい!ときゃあきゃあしているのは、おなじみハルカとヒカリ。
そして始業ベルが鳴り、みな一斉に駆け出した。

うん、さっきまで明るかった空も、向こうからくる雲はどんよりとしている。
一雨くるかもしれないな。

べしゃあ!!
「いてぇ!」
あっ、サトシがつまづいた。
今日のジョーカーは彼なのかもしれない。





「おっはよ〜カスミ!」
「おはよー。」

「まずは挨拶。」
「これは無難ね。」

ハルカとヒカリの探検隊は今日もゆく。
…しかし、やはり雲行きは怪しいぞ。



そして1限目終了。
「あっサトシが席を立った!
いつもだったら突っ伏して寝てるのにね。」
「きっとカスミのところよ。」

だがサトシが目にしたのは、2年のタケシと仲良く話しているカスミだった。
んまぁ、タケシは幼なじみだしな。
サトシはひとり納得して席に戻った。

「タイミングわる〜い…」
「ほんと…」



そして2限目のあと。
つぎはケンジが彼女のとなりにいた。
いらいら。

「…。」
「…。」



こんどは委員会がどーのこーのとヒロシが訪れた。
まぁ、委員会、だし?とじぶんを抑えてもいらいらはだんだんと募るばかりだ。

「ちょっとやばいかも。」
「サトシ爆発しなきゃいいけど。」



その後も生徒会の用だとシゲル(…)、
授業見学だとマサト(わけわからん)、
やぁとダン(なぜ)、
聞きたいことがあるとシンジ(そんぐらいおれに聞けよ)、
ツトムと名乗るファン(おれ知らねー)、
そしてオーキドやロケット団などの、明らかに彼が怒る対象ではないエトセトラまでもがカスミに話しかけ、いささか疲れた表情を見せる彼女を垣間見たとき。
サトシはとうとう出馬した。

「ちょっ…!
サトシここは行っちゃだめかも!」
「ハルカ、ここは止めないでおこう。」
ヒカリが口角をにやりとあげた。





「あっ!
サトシ。」
呼ばれた本人はばんと彼女の机を叩いた。

「ありゃあ…」
「サトシ…」

探検隊だけでなく、クラスメートや廊下周りにいた生徒たちまでふたりに注目した。





「…おれは!」
サトシはカスミの手をとり叫んだ。

「…おまえの彼氏だ!
鎖つけてつないでおきてーけどそんなことだめだし!
けどおまえはおれのだぜ!?
わかってんのか!!」



おぉ〜っと漏れる歓声。
やっちまったなぁと頭を抱える探検隊。

カスミは真っ赤になり、わなわなと震え出した。



「…カスミ?」
「…何もこんな公衆の面前で言わなくたって…。
少しはTPOってゆーものをわきまえなさいよ!!」

ふたたびどよめく観衆。
カスミはサトシをどんと突き飛ばしぷんすかと出て行った。
いつもの運動神経はどこへやら。
サトシは机と椅子の海に鮮やかにダイブした。



「えぇっ!?
なんで?
カスミっ!?」
サトシは追いかけようとした。が。

「フシギバナ、ひかりのかべ!」
「ミミロル、しんぴのまもりよ!」
ヴーンと現れた、見えない壁はサトシの周りを囲った。



「えっちょっお前ら!!」
サトシはどんどんと壁を叩いたがびくともしない。

「その中で頭を冷やしなさいよばかサトシ!」
「カスミを泣かせた罪はカビゴンより重いんだから!」
「はぁ!?」
そしてふたりはカスミを追いかけた。

ついでに、とグレイシアとポッチャマを出しダブルれいとうビームを指示。
箱の中ではシベリアきぶんが味わえた。



「だからって…!
ほんとうに冷やすこたねぇだろう…!
さみぃいぃ!!」
サトシは出してくれぇと、歯をがちがちしながらせがむが、クラスメートはご愁傷様、と合掌するばかりだった。










四面楚歌
カスミを泣かせたやつはあたしたちが許さないんだから!



「てかカスミを彼女にした時点でこらしめるべきだったかも!」
「だいじょーぶ、サトシ今ごろ凍りづけになって反省してるわ」



「…凍死」











090314
つきさまに捧げます。
リクとはあってないし、ふざけてるし(-_-)
なんかいろいろとごめんなさい(:_;)
でも大切に書かせて頂きました。
相互してくださいほんとうにありがとうございました!





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あきゅろす。
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