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 白を基調とした建物の中、足早に二つの影が通り過ぎて行く。
 何を急いでいるのか、一室に入ると荒々しくドア閉めその後は静寂となる。
 もつれるようにベッドへなだれこんだ二人は互いに顔を見つめ合い、知らず知らずの間に唇を重ねていた。
 それは全ての欲求を吐き出すように強引で荒々しくもあったが、拒むような言葉は一切聞こえてこない。
 それでも、白いシーツの上に黒い長髪を散らしたサファリは、更に続けられる愛撫に身を捩って逃げようとした。
「逃げるなサファリ。逃げるな……」
 アストロはこうなることすらお見通しだったのだろう。
 ゆっくり唇を離すと相手の目を見つめ、宥めるような口調で話し始める。
「乱暴なことはしないと誓う。だから気を許してくれ」
 子供をあやす穏やかさで弟を説得し、静かに頷いたのを確認すると両手は衣服の脱がしにかかる。
 手始めに詰襟のホックを外し、幾重にも着込んだ服を剥がしていくが、その段取りは思いの他、時間を要した。
「……アストロ」
「どうしたサファリ?」
 服を脱がすという行為に熱中して危うく聞き流してしまいそうになったが、アストロは今確かに自分の名前を呼ばれ、手の動きを止めた。
 弟の顔を見ればその表情は決して明るくない。だがアストロは、今更この行為に関して止める気は毛頭なかった。
「……心配はいらないぞ、サファリ?」
 止めた手を再び動かし、目線を手元に走らせながら、声音だけを落として優しく囁く。
 少しずつ明るみにされた白い腹に手を滑らせれば、驚いたようにサファリの胸が大きく揺れる。
 息を飲み、唇を噛んで、声をあげないくらいがせめてもの抵抗か、力んだ身体はベッドに張り付けられたまま、全く動く気配がない。
「……少し力を抜かないか?」
 やんわりとした仕草で胸元へ手を移動させ、そこで一度、サファリの顔を見る。
 安堵させるための微笑を投げ掛け、散らした黒髪のうなじに唇を這わせると、蚊の鳴くような声が漏れてくる。
「──っ! アストロ……!」
「大丈夫だ、大丈夫だサファリ」
 不安気な声を宥め、その唇は再度、肌に埋められる。
 象牙のように白い肌にシルクのような肌触り。
 折れそうな程に華奢な身体つき。
 同じ血筋だというのに、どうしてここまで違うのか。
 どうしてこんなに心を惹き付けるか……
 これが自分の女だったら──そう思いながらも、現実は血の繋がった兄弟。


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あきゅろす。
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