LOVE SICK X

 少年の心は、私には手がつけられないほど、闇色に染まっているのだから。
「流、僕は言ったよね? 君は僕のものだって。許さないよ? 僕以外の何かに愛情を注ぐだなんて。僕を騙せるだなんて思わないで。君が少しでも僕以外に愛情を振り撒くような素振りを見せたら、片っ端から壊して、殺していくからね。覚悟しなよ?」
 少年の大胆な発言に、とうとう私は言葉を失った。
 思考の幼さ、稚拙さにも呆れたが、何より私が愛情を振り撒いたものには、必ず死がついて回ると思えば、迂濶に何かに手を出すことは出来なくなる。
 愛とはこんなに恐ろしいものだったのか。
 私が今までしてきた恋や、抱いた愛は一体何だったのだろう?
 生ぬるい子供のすることだったのだろうか?
 私にはわからない。
 到底、理解も出来ない。
「葵」
「何、流?」
 寒空に二人の吐く息が白く上り詰めた。
 輝く金髪に蒼眼を持つ麗しい少年を一心に抱き寄せると、私はどうしてか笑っていた。
 やはり、どんなに否定しても感情が理解出来なくとも、この少年は私でなければいけないのだ。
 全てを投げ売ってでも、全てを犠牲にしてでも、真に愛してやれるのも、護ってやれるのも私以外に誰もいないのだ。
「君の気持ちは十分にわかったつもりだ。以後、気をつけよう」
「わかればいいんだよ、わかれば」
 白銀の世界で私と少年は、ペットであった残骸を最後に弔うと、この場を後にした。
 私は少年の前でも仕事の面でも、表面上は何ともない素振りを見せてはいたが、実は立ち直るのには相当な時間がかかったのは言うまでもない。





 ──後日
 いい加減、気持ちも収まってきたのだし、この水槽も処分しよう、そう思い片付けを始めたところに、いきなりノックもなしに少年は現れた。
 息を切らし、頬を赤く染め、何やら興奮したような素振りで手に持った白い箱を私に差し出すと、開けて見ろと言う。
 嫌な予感がした。
 はっきり言って、この少年といる時の勘はよく当たる。
 開けて見ないわけにもいかないので、渋々中身を見てみると、やはり其処には私の嫌な予感が的中したものが入っていた。
「どういうつもりだ葵? また私に飼わせて殺すつもりか?」


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