序章 [
 あやふやに、人間として誓った遥への忠誠心と、ガーディアンとしての正義心と、悪魔としての遺伝子に含まれた破壊衝動と飢餓衝動の本能の間を彷徨いながら、気づけばガーディアンとしての正義心が、君主である者に牙を向けていたのだ。
「……申し訳、ありません」
 悪魔となった青年は、金色に輝く瞳を細め、後悔の念を込めて謝罪をした。もちろん許されないことを知りながら。
「謝って許されることと、許されないことがあるくらい、分かるだろ?」
 薄気味悪く笑った少年に、寛大な心はなかった。神でもなければ、人を上手くそそのかす悪魔でもない。目の前に立つのは、大人の葉から見ても子供ではなく、服従だけを全てとする暴君だったのだ。
「手負いの獲物一匹に、もう失態は許されないからな」
 そう言いながら喉元に押しつけられた銃口に、葉は一人、喉を鳴らして目を閉じた。
 轟音。
 これで八回目の銃弾を浴びた首もまだ健在。それでも身体は、力なく仰向けになる勢いで地に崩れた。
 それも間もなく、折れた骨を修復し正常に起き上がるのだが、その顔にはまるで、生気というものが見あたらなくなっていた。
「――四度目はない。殺れ!」
 遥が煙草を地面に叩きつけるのと同時に、悪魔青年の姿は空に混じるように掻き消えていた。


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あきゅろす。
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