庚の見る先には、大きな橋がかかっていて、その橋を渡ると街の中への道となる。
海へと続く大河はこの街の一つの見物でもあった。
「ここをゆっくり見るのも随分久しぶりですねぇ」
眩しい日差しが照りつける中、悠は長く続く手すりへと腰を預け、眼下に広がる河の流れを堪能していた。
橋は約1q程あり、その下にはもちろん大きな河が流れていて、透き通る水に、魚の姿もちらほら見えている。
「何時来てもここはいいね」
凛々も橋に寄りかかり、扇がれる髪をかきあげて、海に繋がる河の流れをゆっくりと眺めていた。
「凛々、悠、行くぞ。また後で来るといい」
せかされた二人は、顔を見合わせて笑う。一番急いでいるのは庚自身であって、それを考えると笑いが止まらない。
「行こうよ、悠。後にしよ」
「そうですね。夕方に見る景色もまた、綺麗ですしね」
笑い合う二人は、再び庚の後をついて行き、艶の店へと向かう為、街へと続く長い道のりを歩きだした。
いつも優しい美咲はもういない。
クールで厳しい庚と、かなりのマイペースでおっとりした悠と自分だけ。
この三人で生活するには支障はなかったが、これから美咲を探すとなれば、波乱万丈な日々が続くだろう。
そんな不安が凛々の中で、少しだけ渦巻いていた。
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