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空の箱庭
07
ぼんやりと外を眺める。
自分の気持ちとは裏腹に、雲ひとつない青空だった。
ふと、視界の端に手帳を捉えて、塞いだ気持ちのまま、それを手に取った。
――母のことは、わかっていたつもりだった。テイラーの辛そうな表情を見るたびに、きっとこの世にはいないのだろうと。
…しかし、その死に直面して、自分がどこかで母は生きていると…いつか出会えるだろうとまだ希望を持っていたことに気づき、愕然としてしまった。

小さい頃、近所の子どもたちにからかわれ、いじめられた過去が甦る。

「捨てられた」「いらない子」「周りと違う」

口々に吐き捨てられて、悔しさで涙した日々は、乗り越えて来たはずだった。

「…自殺だなんて」

自分を生んで、死を選ぶなんて…自分はみんなが言うように本当にいらない子どもだったのだろうか?
手帳の表紙を眺めて、しばらく母に思いを寄せていると、唐突に、夢の中の巨樹━━イグドラジルのことが頭をよぎった。
黒曜石に根を張る巨樹が天を突き抜ける、あの神秘的な空間…。
サクははっとして、手帳を開き、ある一文に目を留めた。

『すべてはあの神秘の森から始まった』

この地で、神秘の森と呼ばれるのは、サクがこの部屋からいつも遠く眺めている『イラティの森』しかない。
神が棲むと崇められいるその森は、テイラーに小さな頃から、立ち入ることをきつく禁じられていた。
何の確証もないけれど、イラティの森の奥に、イグドラジルが存在するような気がした。
それに、自らの出自に関わる重要な事実が、その場所にあるのだとしたら?――今日にはここを経つ自分には、その事実を確かめることは、もう叶わない。
先を読み進めるのもいいけれど…時間は限られている。

――行ってみようか。

イグドラジルへの憧憬が、サクの衝動を後押しした。手帳を握り締め、ふわふわとした気分のまま、不思議な感覚と足取りで部屋を後にした。
階下には、テイラーの姿はなかった。きっと、礼拝所で仕事をしているのだろう。
サクは、先ほど泣いて塞ぎこんでしまったことと、今からテイラーの言いつけを破ることが気まずくて、こっそりと家の裏戸から、林道へと向かった。






サクは『何か』に導かれるように、自らの定めたる新たな岐路へと足を踏み入れた。















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あきゅろす。
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