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構わず、家康は座り込んだ三成の目線に合わせて手を握り直しながら、相変わらず感情の読めない笑みを向け

「三成。お前はもう"石田三成"として此処以外では生きれない。刑部の為にも、死ぬ事だって出来ない…ワシにお前の命を預けるんだ」

「………」

カタカタと震えたまま相変わらずどこか遠くを一点に見つめている三成を良しとしなかったらしい。

家康は三成の手の傷口を強かに抉る様握り込み、彼の意識を自分へと無理矢理引き寄せた。


「…ッ、痛…!」

「大切な事を聞いてるんだ。ちゃんとワシの瞳を見て、その口で応えてくれ」


口調こそ穏やかであるが、その瞳は一切の異見を認めていない。

三成の精神も肉体も、どちらも全て自身が独占したいという恐ろしいまでの固執である。


それが愛憎欲にまみれた汚ならしいものであると分かっていても、三成には最早首を横に振れるだけの"涯"が残っていなかった。


数秒の沈黙を経た後、三成は無言のまま首を縦にゆっくりと振った。

瞳から流れ伝う血の涙を大きな手で拭ってやりながら、家康はやっと手にいれたその細い身体を鉄格子越しに引き寄せて抱き締める。



「刑部が望んだ様に、お前は生きるんだ…今はそれでいい」


耳元に唇を押し当てられながら囁かれた言葉も、三成に届いているのかは怪しい。

それより何より、刑部からの言伝てが彼の頭の中で、三成の"これから"を俊足的に方向を描き始めていたからだ。


ーよく、ぐ し を手繰れー






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