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左頬に小さめの湿布を貼った顔で両手首を固く縛られ、ただ大人しく床に座り込んでいる。

殴られた又は蹴られた痣は頬以外に腹部や太股にも付いており、それは三成が黒家康を拒絶した回数でもある。

拒絶すれば殴り、そして犯す…黒家康が現れてまだたった一日だというのに、三成はその身を既に三度も暴かれ、性的な暴力を受けていた。

心身共に衰弱状態に差し掛かり始めた三成は無論、他陣営の武将らの前に立ち、今後の結判を伝えるなど不可能である。

黒家康の目論見通り、彼の都合の良い様に、天下を進められてしまったのだ。


昼間でも薄暗い仏向間に三成は一人で…いや、傍らには以前家康が死んでいた時に安置していた黄漆御台があり、その上に刑部が眠っている。

正しくは、眠らされているのだが。


「…刑部……」


刑部だけではない。
石田軍の兵士達も黒家康の手によって、彼の命令を忠実に聞くだけの人形にされてしまっている。

つまり、三成は自分の陣営にいながら全く孤立してしまっているのである。

これが三成だけならば、舌を噛んで自害する事も出来ただろう。

しかし、刑部と兵士達を人質に取られている。

自分が死ねば必ず殺すだろう事は三成自身、目に見えていた。


「あの家康は、私の咎だ…」


"好きだ"と素直に伝えて来た家康に、ろくに取り合わずその気持ちを蔑ろにして傷付けた…

三成は家康を失った時初めて、彼の存在の大きさを自覚し、気付いたのだ。

それがまだ、好きだという感情まで至っていないにしたとしても、憎しみと親しみが同居しない交ぜになる様な複雑な存在は、三成にとっては未だかつてないものである。

そうであるが故に今の家康、黒家康は自分が彼に被った咎であるとして、三成は強く拒絶出来ないのだ。

ふと、三成の右手の甲辺りを温かみのある柔らかい黄色の光が包み、淡く光った。

不思議に思って三成が目を凝らした、その時


『三成』

「…ッ!?」




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