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黒い家康の放つ眩い光は、霊魂という陰の存在になっている家康には立派な攻撃になる。
自身の属性であり、仲間である光にモノの見事に弾き飛ばされてしまった。
肉体を乗っ取っている黒い家康には声は届くらしく、家康はその存在が自分の最も強い"欲"である事を初めて知った。
それと同時に、今まで隠し通してきた三成への暴力的なまでの愛欲が、黒い家康にはすべて反映されている事に気付く。
このままでは本当に三成の身が危ない。
「う…っ、かは…ッ…!家…、康…ッ!」
『お前の苦しむ姿を見ているととても興奮する。フフ、離して欲しいか?三成」
三成は必死に黒家康の手に自らの手を重ねて、ただ頷く。
離してくれと。
『ならば、この透き通る様な肌も、艷を振り撒く切れ長の瞳も、無意識に淫らな色を振り撒くこの腰や尻も…何もかもワシのモノであると、誓えるか?』
「…ッ…!?離…せっ…!」
三成の答えが自分の求めているものと違っている事が気に入らなかったらしい。
黒家康は三成の首を更に絞め、笑みを一切取り去った真顔で脅しかけた。
『誓え。今ここで、だ』
「……ッ!?…ッ…」
家康は今更ながら漸く三成の周りに何が起こっていたのかを理解した。
刑部や家臣の者達が奥の間で散り散りに倒れているのだ。
恐らく、いつもの家康…つまり、家康本人の雰囲気ではないと悟った刑部らが三成を逃そうとして攻撃を受けたのだろうと考えられる。
そして、今正に自分の分身であって他人の様な黒家康が、三成へ無理強いをしている。
たとえ見えず触れずとも家康は黙っていられなかった。
「三成ッ!誓っちゃダメだ!そいつはワシじゃない……三成ッ…!」
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