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アザレア






森を抜ける間俺達は必要以上に話さなかった。

深い事は何も聞いてこないのは助かったし、何よりこの沈黙は重くないから良い。

ジェイはルオンと同じく19だそうだ。

若干大人びて見えるのは強い深緑色の目の光のせいだろうか。

リデルと同じ栗色の髪はすっきりとした短髪でジェイを好青年に見せていた。

がたいも良く、成程傭兵団の団長と言うのも頷ける。

相当強いんだろうなと思いその後ろ姿をしげしげと見つめる。

「どうした?そんなに見て」

見過ぎたか…。

まぁ、たいした事ではないし素直に言う。

「いや、ジェイさん強そうだなぁって思っただけです」

「そうか。お前も戦い慣れしてる様だな」

俺の体格を見てそう言う人は初めてで少し驚く。

「そうでもないですよ。しかも戦いと言うか喧嘩慣れですかね」

これも事実。

この顔と体格のせいで舐められっぱなしってのは面白くないから喧嘩は基本的に買うタイプだった。

「機会があれば手合わせ願いたい」

まさかの誘いにこれまた驚いた。

「俺じゃ役不足でしょう」

「そんな事は無い。それに「ジェイ、こんなとこにいたのですか」ん?アーキヤか」

森の茂みから現れたのは俺と同い年くらいの少年。

夜の様な黒の髪と目が特徴的だ。

髪はそれなりに長く、緩く後ろで結ってある。

背は俺より少し低いくらい。

ジェイの反応からして傭兵団の仲間だろう。

「…その者は?」

明らかな警戒を含む視線を俺に向けてくる。

「ケイだ」

「……そうですか」

説明が短すぎますよ、ジェイさん。

「はじめまして、ケイです」

「…アーキヤです」

そっけない態度だが答えてくれた。



少し重くなった沈黙の中進み続ければ森が開けた。

「ここだ」

着いた場所には結構大きめな家がひっそりと建っていた。

ここの世界の家は大概岩か煉瓦でできている。

しかしこの家はカモフラージュの為か木で出来ている様だ。

遠目で見れば森と融合して見えるだろう。

「あ、団長、アーキヤ。おかえりなさい」

深緑色の長い髪を高い位置で一括りにした女性は快活な雰囲気をもっていた。

「あ、そっちの人がケイさん?リデルから聞いたよ。本当に女の子みだね」

「はは、どうも」

悪気はないだろうその言葉に苦笑いで答える。

「クライ、ラキの様子は?」

「リデルの採ってきてくれたミビクシ草のお陰で大分良いよ。明日にはもう飛べると思う」

「そうか」

アーキヤは何も言わずそのまま家の中に入っていってしまった。

つか、〔ラキ〕は〔飛べる〕のか…。鳥とか?

「まったく、アーキヤったら。お客さんも居るのに」

「気にしないで下さい。突然お邪魔したのは俺ですから」

「ともかく飯だ。早く入るぞ」

「ジェイもジェイね。食欲だけなら大陸一よ」

はは、と苦笑いを漏らして俺も促され家にお邪魔した。

「クライさん遅いっすよー」

「もう準備は出来ていますよ」

「僕も手伝ったよ〜」

入って直ぐで三人の声がかかった。

皆一様に暗めの赤い髪と橙の目をしていた。

ごついがたいの青年から始まり、穏やかな雰囲気の青年、最後はリデルよりも少し幼いくらいの少年だった。

見目からして兄弟か。

「ん?後ろの別嬪さんがリデルの言ってたケイさんっすか?」

「はじめまして。ご厚意により一晩泊めさせていただきます」

見た目に似合わず子供の様に無邪気に聞いてくるがたいの良い青年に笑顔で答える。

「おぉ〜!笑った顔もまた美しいっすねぇ」

「ギア、初対面の人に失礼ですよ。すみません、弟が失礼いたしました」

「いえ」

窘める様に言う彼がどうやら兄の様だ。

「私はキルニアといいます。この二人は弟のギアとカイアです」

「よろしくっす!」

「は、はじめましてっ」

「こちらこそ」

元気良く挨拶をするギアとちょっと戸惑い気味に答えたカイア。

笑顔で答えればギアはよく言う目をハートにした状態に、カイアは答える様にはにかんだ。

「もう、クシアのわからず屋!!」

「駄目なもんは駄目だ」

席を勧められてギアの隣に座っている(ギアによる半強制)と奥からリデルの荒上げた声とそれをあしらう声が聞こえた。

「ケチッ!!」

「はっ何とでも言え」

「まあまあ、二人とも;;」

入ってきたのはリデルと、クライと同じ髪色の青年と薄い橙色の髪の青年。






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