‐029‐
ふ、っと目が覚めた。
――…あ?
目が覚めたという事は朝なのだが、日差しが全く感じられない。早く起きたのか、と思い寝返りをうって、
《寝ぼけんな寝ぼけんなースリザリン寮だぞココはー。》
――…そうだった。
魔法学校隠密乱入記 ‐029‐
もそもそとシーツから抜け出して、寝ぼけ眼をこすりながら天蓋を上げ、いつもの癖でクロゼットから制服を呼び寄せ、はっと気付く。慌ててルフィルのベッドを見れば、
――やらかした……!
驚愕の表情も露わにこちらを見る黄緑色と目が合った。
「お、おはよ…」
さらっと流してくれないだろうかと言う淡い希望を込めて、出来るだけ自然に話しかける。
が。
「ユイゴ、今の…!!」
制服を指さし、それ以上は言えないのか口をパクパクさせるルフィル。
――流しちゃぁくれないか…
《ったりめーだろ。諦めろ。そもそも7年間隠し通す気だったのか?》
――…あー、そっか…。
7年間、そんな長い時間を同じ寮生として、ルームメイトとして過ごす。そんなホグワーツに入ったなら当たり前の事を、結悟はこの時初めて理解した。
「…あのさ、ルフィル。」
諦めたように息を吐き出して、結悟はルフィルに向き直る。まだショックから抜け出せていない様子のルフィルは、それでもこちらへ注意を向けた。
「あんま、他の人には言わないでもらいたいんだけど…」
そう前置きして、結悟はルフィルに“ルームメイトとして”知ってほしい事、つまり自分の血筋や能力の事などを、ただし自分が異世界から来た事とそれ故未来を知っている事、精神年齢と身体年齢との誤差以外をかいつまんで話した。
「そっか、じゃあユイゴの言ってた“スエヒロの血”ってそう言うことだったのね。」
「うん。でもアタシも魔法に関しては教科書読んだくらいの知識しかないし、それで変に期待されても迷惑じゃん?」
「そうよね…うん、ユイゴから許しが出ない限り誰にも言わないわ。だから…」
そこまで言うと、ルフィルは顔を曇らせ視線をさまよわせた。
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