‐026‐
――アホやらかした…
深くため息を吐いて、帽子をかぶる。
魔法学校隠密乱入記 ‐026‐
途端に視界どころか耳までさえぎられて、まるで海の底にでも転送されたような気分になる。
「フム、海の底か…中々面白い表現をする…いやいや、それどころではない。これは難しい…」
帽子がうなる。
――そんな難しいですか?
「ああ、それはそれは難しい。先ほどこれほど難しい選択は無いと思ったがいやはや、それよりもはるかに難しい…勇気も頭脳も忍耐強さも、狡猾さも持ち合わせておる。
ものぐさのようじゃがそれ以上にすべきことに対する誠意の何と強い事か。いやしかし何よりも稀有な縁を持っておる…」
それからしばらく、帽子はウームだのいやしかしだのとぶつぶつ言っていたが、やがて、
「なんともまあ…考えれば考えるほど、君はどこに入れてもうまくやれるだろうと思わざるを得ん。
しかし君はどこに入ってもうまくゆかんじゃろうて…さてさて、どこに入れたものか…希望はあるかね?」
――あ、そこ訊いちゃう感じですか…。あー、っと…
しばし考える。
――…なんかもうどこでもいいです。あ、でもグリフィンドールは後々色々めんどそうだし、レイブンクローは寮に入るのに問題解かなきゃいけないの面倒だし…ハッフルパフ?
「なんと、なんと、グリフィンドールを嫌がるか…確かに、機知に富む知才、目的の前に立ちはだかるならはどんな規則も無視する断固たる決意…これらはむしろ…」
――あー、スリザリン行きですか。地下室…弄ってもいいかな…とりあえず主人公ズとの接触率が低くなるならいいや。
「よしよし、では…スリザリン!!」
「「そんな!!」」
――あ、忘れてた。ゴメン、フレジョ。
帽子を脱いで椅子に置いて、一応ジェスチャーで双子に謝っておく。
そうして、運よく空いていたテーブルの端に座って組み分けされるロン他二名を眺めた。
「君、さっきウィーズリーと何かしてたみたいだけど、まさか親しいわけじゃないよね?」
最後の一人がスリザリンに組み分けされた後、はす向かいに座っている上級生の少年が訊いてきた。
やはりと言うか、どことなく高圧的な話し方だ。
「…そう、見えましたか?」
くすりと馬鹿にしたような笑いと共に返せば、案の定勘違いしてくれたのか満足げに頷いて少年は立ち上がったダンブルドアに向き直った。
「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。
そーれ!わっしょい!こらしょい!以上!」
そう言って、席に着いたダンブルドア。それに出席者全員が拍手喝采を送った。いや、新入生は殆どがなんだこの人、と言うような顔で笑っていいやら戸惑っているようだった。
――ま、ああだから校長なんてやってられんだろうけど。
ふとテーブルに視線を戻して、げんなり。
ローストビーフ、ローストチキン、ポークチョップ、ラムチョップ、ソーセージ、ベーコン、ステーキ、茹でたジャガイモ、グリルポテト、フレンチフライ、ヨークシャープディング、豆、人参、ソース各種、ケチャップ、そして何故だかハッカ入りキャンディ。
――なんだこの肉尽くめ!!野菜食え野菜を!!
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