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 ひだ襟の服を着てタイツを穿いた、いかにもなゴーストが唐突にこちらに気付いて言う。が、誰も返さない。

「新入生じゃな。これから組み分けされるところか?」

 太った修道士が一年生に微笑みかけた。近くにいた何人かが黙って頷いた。

「ハッフルパフで会えるとよいな。わしはそこの卒業生じゃからの。」

 修道士がそう言ったところで、ドアが開いた。

「さあ行きますよ。」

 厳しい声がした。

「組み分け儀式がまもなく始まります。」

 マクゴナガルが戻って来たのだ。その声にゴーストたちは壁をすり抜けて去って行った。

「さあ、一列になって。ついてきてください。」

 そう言って歩き出すマクゴナガルに、入り口に近い生徒から皆どこかぎこちなくついて行く。結悟はかなり後の方に並んだ。
 そうして一年生は部屋を出て再び玄関ホールを横切り、二重扉を通って大広間に入った。
 瞬間、結悟も含め一年生は誰もが息を呑んだ。そこにはまさにファンタジーの世界が広がっていたのだ。
 何百何千と言う数の蝋燭が宙に浮き、四つの長テーブルには三角帽をかぶった上級生たちがずらりと並び、そのテーブル上には輝く金色の皿とゴブレットが。広場の上座には職員用の長テーブルがあり、ダンブルドアをはじめ先生方が座っていた。
 マクゴナガルはそのテーブルの前まで一年生を引率し、上級生の方に向く格好で一列に並ばせた。

――今なら視線だけで死ねる…!

 結悟はひくりと唇の端が引きつるのがわかった。それくらい好奇心に満ちた目で見られているのだ。
 天井にかけられている魔法の説明を、誰にともなしに言うハーマイオニーの声が聞こえたと思うと、マクゴナガルが今度は四本足のスツールを持って一年生の前に置いた。
 その上には、いかにも年老いた魔法使いが被ってそうなとんがり帽子が置かれていた。つぎはぎだらけでぼろぼろで汚らしいその帽子は、しかし圧倒的な存在感があった。
 広場に居るすべての人がおそらくこの帽子に視線を向けているのであろう。水を打ったような静けさの中、帽子が微かに動いた。ピクピクと痙攣するように動いた後、つばの縁の破れ目がまるで口のようにぱっくりと開いたかと思うと、帽子は歌いだした。

――さてさて、お楽しみの組み分けタイムだぞ、っと…。


自分が果たしてどの寮に振り分けられるのか、楽しみで仕方無いとにんまりする結悟だった。





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あきゅろす。
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