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‐024‐

 扉がぱっと開いて、そこにはエメラルド色のローブを着たマクゴナガルが立っていた。結悟は自分のローブの袖の長さを見咎められたような気がして、へらりと笑っておいた。

――だって袖口わさわさしてるの嫌なんだもん…

《いい年こいてだもんとか言うなよ。》

 頭の中で響いた声は無視することにした。


魔法学校隠密乱入記 ‐024‐




 マクゴナガルに連れられ、玄関ホールを横切り大広間を素通りしホール脇の小さな部屋に案内された一年生一行。
 生徒たちは互いに顔を見合わせ、また囁き合い不安げな表情だった。
 結悟はなんでもないような顔をしているがしかし、それはこの後何が待ち受けているのかを知っているからであって完全にこの生徒たちと同じ状況に置かれれば…

《いーや。お前そんな状況になっても不安で挙動不審になるような性格してねぇだろ。》

――…おっしゃる通りで。

 けらけらと笑い飛ばす瑞月に、苦笑し応える。確かに、不安にはなるだろうがあたりをキョロキョロ見回すような事はしないだろう。

「ホグワーツ入学おめでとう。」

 マクゴナガルが口を開く。

「新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席に着く前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。寮の組み分けはとても大切な儀式です。
 ホグワーツにいる間、寮生が学校での皆さんの家族のようなものです。教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。」

――まさに全寮制…

「寮は四つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。それぞれ輝かしい歴史があって、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。
 ホグワーツにいる間、皆さんのよい行いは、自分の属する寮の点数になりますし、反対に規則に違反した時は寮の減点になります。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。
 どの寮に入るにしても、皆さん一人一人が寮にとって誇りとなるよう望みます。」

「まもなく全校列席の前で組み分けの儀式が始まります。待っている間、出来るだけ身なりを整えておきなさい。」

 そう言って、マクゴナガルはロングボトムのマントの結び目に目を止め、ロンのそばかすに目を止め、さっき一緒にボートに乗っていた女の子のローブの裾が短すぎるのを見て眉をひそめた。

「学校側の準備が出来たら戻ってきますから、静かに待っていてください。」

 そう言ってマクゴナガルは出て行った。結悟は他の生徒のように特に何かしなければならないという思いに駆られることは無かったが、それでも一応前髪を手櫛で梳いてみた。
 他の生徒たちはそわそわとしているが、もうほとんどだれも口を開かなかった。
 と、その時。突然悲鳴が上がる。後ろの壁から、ゴーストが部屋に入って来たのだ。一見薄い絹がふよふよと浮いているようにも見える20人くらいのゴーストが一年生には目もくれず、互いに話し合いながら部屋を横切っていく。
 何やら議論の真っ最中らしく、太った小柄な修道士が言うのが聞こえた。

「もう許して忘れなされ。彼にもう一度チャンスを与えましょうぞ。」

「修道士さん。ピーブズには、あいつにとって十分過ぎるくらいのチャンスをやったじゃないか。我々の面汚しですよ。
 しかも、ご存じのように、やつは本当のゴーストじゃない…おや、君たち、ここで何してるんだい。」



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あきゅろす。
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