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‐023‐

 夜の帳が下りた狭いホグズミード駅に、紅の列車は止まる。ぞろぞろと生徒たちがコンパートメントから出てくるのを、結悟はランプの真下に立って見ていた。

「うはー…こんな人居んのに駅の規模おかしいだろ…」

「しゃあねぇ、昔っからあるもんだ。そうそう変えられるもんじゃねぇ。」

「そーいうもんか。」

「そういうもんだ。」

 ふう、と結悟は息を吐く。たちまち人であふれかえるホームを見て、やはり“フライング”してよかったと思うのと同時に、この時期日本なら寝苦しい夜が続いているだろうなとぼんやり思った。
魔法学校隠密乱入記 ‐023‐




「イッチ年生!イッチ年生はこっち!」

 ハグリッドが生徒たちのざわめきにも余裕で勝ちそうな大声を張り上げる。
 その声に導かれて皆一様に不安そうな蒼白な顔をさせた男の子女の子がこちらへやってくる。

「イッチ年生はこっち!ハリー、元気か?」

 結悟には全く見えなかったが、ハグリッドには見えたらしく満面の笑みで後ろの方に笑い掛けた。

「さあ、ついてこいよ…あとイッチ年生はいないかな?足元に気を付けろ。いいか!イッチ年生、ついてこい!」

 そう言って歩き出したハグリッドに、わらわらとついて歩く。ハグリッドの近くに居るお蔭でランプの光の恩恵を受けられる結悟でさえ危うくこけてしまいそうな道のりだった。

『なっさけねぇなー。』

 周りの騒音を良い事に、瑞月が影から話し掛けてくる。

――うっさい。この道通ったの初めてだし。こんな体じゃこけやすいし。

 しかしこちらは堂々と返すわけにもいかず思念で返す。

『そうかい。しっかし難儀だな、一年生だからホグワーツ城で合流って訳にもいかねぇし。』

――ホントにな。めんどくさいったらない…

 まだまだ先まで続きそうな真っ暗な小道を見て、溜め息。そうしていくらか歩いていると、

「みんな、ホグワーツがまもなく見ええるぞ。」

 振り返ってハグリッドが言った。

「この角を曲がったらだ。」


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