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そうして、たった今気付いたような顔でグレンジャーに向き直る。
「何か御用?」
「二人とも急いだ方がいいわ。ローブを着て。私、前の方に言って運転手に訊いてきたんだけど、もう間もなく着くって。
三人とも、けんかしてたんじゃないでしょうね?まだ着いてもいないうちから問題になるわよ!」
「スキャバーズがけんかしてたんだ。僕たちじゃないよ。」
しかめっ面で言うロン。
「よろしければ、着替えるから出てってくれないかな?」
「いいわよ。
…みんなが通路で駆けっこしたりして、あんまり子供っぽい振る舞いをするもんだから、様子を見に来てみただけよ。」
グレンジャーはツンと小バカにしたように言って、
「ついでだけど、あなたの鼻、泥がついてるわよ。気が付いてた?」
そう言い残して去って行った。
「いやー、元気な女の子がいたもんだな。」
くつくつと喉で笑いつつ、結悟は立ち上がる。列車の速度は確かに緩くなってきていた。
「元気?あれが元気だって?ユイゴ、君きっと将来大物になるよ。」
まさに信じられないと言った顔でロンが言う。
「そいつぁどうも。じゃあ、後でね。」
「え?」
ひら、と手を振るとハリーが言った。ロンもぽかんとしている。
「…?え、って、だって着替えんでしょ?」
そんな二人に結悟までぽかんとする。
「そうだけど…」
そうロンが言って、ハリーと顔を見合わせる。その様子にふと思い当った結悟。
「…あのさ、アタシ女だよ?」
――一人称アタシだし…って、英語じゃ全部一緒じゃん…いや、それにしたってフレジョは勘違いしてなかったし先生方も…でもトムさんには坊ちゃんって言われた気が…そりゃズボンはいてるけどさぁ…
衝撃を受けたような顔をしている二人を見て、結悟はなんだか切なくなった。
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