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マルフォイはショックを受けたような顔をして手をさっと引っ込め、なぜかハリーに再度向き直ると言った。
「ポッター君、僕ならもう少し気を付けるがね。」
絡みつくような口調で続ける。
「そうでないと、君の両親と同じ道をたどることになるぞ。君の両親も、何が自分の身のためになるかを知らなかったようだ。
ウィーズリー家やハグリッドみたいな下等な連中どころか、こんなマグルの血を引く奴と一緒に居ると、君も同類になるだろうよ。」
その言葉にカチンと来たのかハリーもロンも立ち上がった。ロンは顔を真っ赤にさせている。
「もういっぺん言ってみろ!」
ロンが叫ぶ。
「へえ、僕たちとやるつもりかい?」
それをせせら笑うマルフォイ。
――“僕たち”って…お前はなんもしないだろうがよ。
勇敢にもハリーが言い返しているのを聞きつつ、結悟は窓枠に肘をついてそれらを眺めていた。
自分に対する罵倒嘲りには慣れているし、たかだか11歳児の戯言だと思い特に何も感じずにいたのが年齢不相応だったかと少々心配になるが、彼らはそんなことは全くお構いなしのようだった。
「出ていく気分じゃないな。君たちもそうだろう?僕たち、自分の食べ物は全部食べちゃったし、ここにはあるようだし。」
マルフォイがそう言うとゴイルがロンのそばにある蛙チョコレートに手を伸ばした。
飛びかかろうとしたロンの左手を結悟は咄嗟に掴む。どうして、とハリーとロンがこちらを振り返るよりも早く、ゴイルがその巨体に似合わぬ甲高い悲鳴を上げた。
なにやらわめきつつ、ぐりんぐりんと振り回している手を見れば、さっきまで寝こけていたスキャバーズがその小さく鋭い歯をガップリと指に食い込ませているではないか。
――…ご愁傷様。
く、と目を細め、結悟はとうとう根負けして通路側の窓に叩きつけられたスキャバーズと足早に去っていく三人を見ていた。
と、三人が視界から消えるか消えないかのうちに、グレンジャーがひょっこりと顔を覗かせた。
「いったい何やってたの?」
床一杯に散らばっているお菓子を見やりつつグレンジャーが言った。
「こいつ、ノックアウトされちゃったみたい。」
そんな彼女を無視して、ロンはスキャバーズの尻尾をつまんで持ち上げていた。そう言ってもう一度ねずみを見る。
「ちがう…驚いたなあ…また眠っちゃってるよ。」
ぷーぷーと寝息を立てているスキャバーズに呆れたように言って、こちらを向いて訊く。
「マルフォイに会ったことあるの?」
結悟とハリーはちょっと顔を見合わせたが、ハリーが口を開いた。
「僕、あの家族のことを聞いたことがあるよ。」
ダイアゴン横丁での事を話し終わった後、暗い顔でロンが言った。
「『例のあの人』が消えた時、真っ先にこっち側に戻って来た家族の一つなんだ。魔法をかけられたって言ったんだって。パパは信じないって言ってた。マルフォイの父親なら、闇の陣営に味方するのに特別な口実はいらなかったろうって。」
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