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‐022‐

 前代未聞の大事件。あの強固な守りを掻い潜るほどの熟練の魔法使いが、何も盗らず去って行ったという。

――この時点じゃ、世間も馬鹿じゃないんだよなぁ…

 見えるギリギリに脅威がある故に、何かあればもしやと疑う。しかしそれは世間一般だけで、政治的中枢はもう安楽椅子の堕落の味を占めてしまっている。
 そんな彼らが世間一般を洗脳し得るだけの力を持っているのだから、人とは面倒なものだ。

――なんてな。

魔法学校隠密乱入記 ‐022‐




 ハリーとロンがクィディッチについて話し合っている間、結悟はつらつらとそんなことを考えた。
 そうするのはこの世界に来てからもう何度目と数えられない程だったが、そのたびに自分の鬱屈した独りよがりな考えに自嘲の笑みをこぼしていた。それは今回も例外ではなく。

――アホらし。

 ふっと息が漏れた、ちょうどその時だった。がらり、と無遠慮にドアが開かれたのは。あ、と思う間もなく男の子三人がずかずかとコンパートメントに入ってくる。
 両脇には大柄な男の子が、真ん中には青白い顔の男の子が。その真ん中の男の子が興味と言うか好奇心丸出しでハリーを見ている。

「ほんとかい?このコンパートメントにハリー・ポッターが居るって、汽車の中じゃその話で持ち切りなんだけど。それじゃ、君なのか?」

「そうだよ。」

 ハリーは短く答える。もうこの時点でぎすぎすした雰囲気になりかけているのだから、彼らの相性の悪さは相当なものなのだろう。

「ああ、こいつはクラッブで、こっちがゴイルさ。」

 ハリーが両脇の男の子を見ていたのに気付いたのか、真ん中の男の子は言う。

「そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ。」

 もったいぶって男の子、マルフォイが言うと、ロンが笑いを誤魔化すかのように咳払いをした。マルフォイはそれを目ざとく…と言うか結悟にしてみればバレバレなのだが、とにかくロンの様子に気付いたドラコ。

「僕の名前が変だとでも言うのかい?君が誰だか訊く必要もないね。パパが言ってたよ。ウィーズリー家はみんな赤毛で、そばかすで、育てきれないほどたくさん子どもがいるってね。」

 そう言って、彼はハリーに向き直って、

「ポッター君。そのうち家柄の良い魔法族とそうでないのとがわかってくるよ。間違ったのとはつき合わないことだね。そのへんは僕が教えてあげよう。」

 そう言って握手を求めて右手を差し出したが、ハリーは応じなかった。

「間違ったのかどうかを見分けるのは自分でもできると思うよ。どうもご親切さま。」

 にべもなく返されてマルフォイの頬に赤みが差したが、ふと結悟に視線が止まるとこちらに話し掛けてきた。

「ポッター君と一緒にいたよね。君は、僕の言っている意味がわかるだろう?」

 そう言って握手を求めて来たがしかし。

「おや、マルフォイのお坊ちゃまは随分と慈悲深いお方のようだ。マグルとのハーフの日本人なんかに手を差し伸べてくださるとは。」

 結悟はくつりと笑って、我ながら子供っぽいと思いつつも意地悪く言う。


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