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「僕、ロン・ウィーズリー。」
まずロンがもごもご言った。
「ユイゴ・スエヒロ。」
この後の展開を知っている結悟は、慌ててハリーが名乗る前に口を開いた。
「ハリー・ポッター。」
「ほんとに?私、もちろんあなたの事全部知ってるわ。」
案の定グレンジャーは食いついてきた。
「参考書を二、三冊読んだの。あなたのこと、『近代魔法史』『闇の魔術の興亡』『二十世紀の魔法大事件』なんかに出てるわ。」
――本を数冊読んだだけで“全部”な…
「僕が?」
茫然と呟くハリー。結悟は鼻で笑い飛ばしたかったが、やはりこれも思うだけに留めた。
「まあ、知らなかったの。私があなたなら出来るだけ全部調べるけど。三人とも、どこの寮に入るかわかってる?私、いろんな人に訊いて調べたけど、グリフィンドールに入りたいわ。絶対一番いいみたい。ダンブルドアもそこ出身だって聞いたわ。でもレイブンクローも悪くないかもね…とにかく、もう行くわ。ネビルのヒキガエルを探さなきゃ。二人とも着替えた方がいいわ。もうすぐ付くはずだから。」
それだけ言い放つと、今の今まで入り口でおろおろと立っていた蛙の男の子、ネビル・ロングボトムを連れてグレンジャーは出て行った。
「どの寮でもいいけど、あの子のいないとこがいいな。」
杖をトランクに放り込んでロンが言う。同じ寮どころか、将来同じ苗字を名乗ることになろうなど今の彼には脳裏にかすりさえしないだろう。そう思うと思わず苦笑いが漏れた。
「へぼ呪文め…ジョージから習ったんだ。ダメ呪文だってあいつは知っていたに違いない。」
そんな結悟には二人とも気付かなかったらしい。ロンがそう恨みがましく呟くと、ハリーが訊く。
「君の兄さんたちってどこの寮なの?」
「グリフィンドール。」
そう言ったロンは自分の言葉に落ち込んだようだった。
「ママもパパもそうだった。もし僕がそうじゃなかったら、なんて言われるか。
レイブンクローだったらそれほど悪くないかもしれないけど、スリザリンなんかに入れられたら、それこそ最悪だ。」
「そこって、ヴォル…つまり、『例のあの人』が居たところ?」
「あぁ。」
そう言って、ロンはがっくりとシートに座り込んだ。
「あのね、スキャバーズのひげの端っこの方が少し黄色っぽくなってきたみたい。」
ロンに気を使ってか、ハリーがそう言った。
「それで、大きい兄さんたちは卒業してから何してるの?」
「チャーリーはルーマニアでドラゴンの研究。ビルはアフリカで何かグリンゴッツの仕事をしてる。」
どこか誇らしげに話すロンは、コンプレックスはあるものの純粋に家族が好きなようだった。
「グリンゴッツのこと、聞いた?『日刊予言者新聞』にベタベタ出てるよ。でもマグルの方には配達されないね…誰かが、特別警戒の金庫を荒らそうとしたらしいよ。」
物語は進む。時は流れる。歯車は回る。…否応無く、未来へと動く。
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