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‐021‐

 車窓から見える風景が田畑といった長閑なものから、森や曲がりくねった川といった荒涼としたものに変わった頃。
 結悟はまだハリー達のコンパートメントに居た。

魔法学校隠密乱入記 ‐021‐



 こんこん、と控えめにドアがノックされ、泣きべそをかいた丸顔の男の子が入って来た。

「ごめんね。僕のヒキガエルを見かけなかった?」

 その言葉に、三人そろって首を横に振る。すると男の子はめそめそと泣きだした。

「いなくなっちゃった。僕から逃げてばっかりいるんだ!」

 ヒステリック気味に泣きじゃくる男の子にハリーが慰めを掛けると、男の子は見かけたら知らせてくれと言って出て行った。

――ヒキガエルがペット…ありえない…

 何度読んでも何度聞いても信じられなかったが、本当に、本当にペットにしている人がいた。それに驚きを隠せない結悟だった。

「どうしてそんな事気にするのかなあ。」

 そんな男の子が出て行ったあと、ロンがぽつり。

「僕がヒキガエルなんか持ってたら、なるべく早くなくしちゃいたいけどな。もっとも、僕だってスキャバーズを持ってきたんだから人の事は言えないけどね。」

 膝の上で眠っているネズミを見ながらそう言った。

「死んでたって、きっと見分けがつかないよ。」

 心底うんざり、といった声で口調で顔で、ロンが言う。

「きのう、すこしはおもしろくしてやろうと思って、黄色に変えようとしたんだ。でも呪文が効かなかった。やって見せようか…見てて…」

 そう言うとロンはトランクを引っ掻き回し、よれよれの木の枝のような杖を取り出した。見るからにボロボロで、端からは白いきらきらした糸のようなものがはみ出ている。

「一角獣のたてがみがはみ出してるけど。まあ、いいか…」

――いいのか、それ…

 結悟が不安に思うなかロンは杖を振りあげると、今度はノックも無くドアが開いた。見ればさっきの蛙の男の子と、ホグワーツの制服をきっちり着た女の子が立っていた。

「誰かヒキガエルを見なかった?ネビルのが居なくなったの。」

 どことなく威圧的な話し方。栗色のふさふさした髪に、少々目立つ前歯の彼女は見なかったと答えるロンの言葉よりも持っている物に気を取られているらしい。

「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ。」

 そう言うと女の子はロンの隣に座り込んだ。ロンはそれにたじろいだが、咳払いをすると、

お陽さま、雛菊、溶ろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ。

 そうして杖を振ったが、何も起こらなかった。スキャバーズは何も感じない様子で鼠色のまま、ぐっすりと眠っている。

「その呪文、間違ってないの?」

 女の子が言う。

「まあ、あんまりうまくいかなかったわね。私も練習のつもりで簡単な呪文を試してみたことがあるけど、みんなうまくいったわ。私の家族に魔法族は誰もいないの。だから、手紙をもらった時、驚いたわ。でももちろん嬉しかったわ。だって、最高の魔法学校だって聞いているもの…教科書はもちろん、全部暗記したわ。それで足りるといいんだけど…私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」

 一寸の隙もなく一気にそれだけ言ってのけた女の子、グレンジャー。
 ハリーとロンは唖然と、結悟は引きつった顔で、それぞれ顔を見合わせた。


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あきゅろす。
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