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『…?』
先ほどの結悟の言葉を守って視線だけで問うてくる瑞月に、
『いや、ちょっとハリーに挨拶してこようかと思って。』
にやりと笑って結悟はドアを開いた。制限が掛からないのならすなわち何をやったっていいという事だ。
『留守番よろしくー。』
そう言って結悟はドアを閉め、すぐそこのコンパートメントをノックした。
「ユイゴ!」
気付いたハリーがドアを開ける。
「久しぶり、ハリー。無事に列車に乗れたみたいで何より。」
ハリーににやりと笑い掛けて、コンパートメントの中を覗く。
「ちょっとの間ご一緒しても?」
中に居た赤毛の少年に問い掛けると、彼は赤べこのように何度か首を縦に振った。
「じゃ、ユイゴこっち座りなよ。」
そう言ってハリーは自分の隣を示す。やはりなぜか彼に懐かれたようだと思いつつ結悟は窓側を譲ってもらい、そこに座る。
「はじめまして、あー…ユイゴ・スエヒロです。」
「僕、ロン・ウィーズリー。」
結悟がすっと出した右手に、ロンは戸惑いながらも応えた。
「そうだ。ユイゴも蛙チョコレート食べる?」
「や、いいや。アタシもいくつか買ったし。」
「そっか…。あ、じゃあ、こっちは?」
そう言うとハリーはバーティー・ボッツの百味ビーンズの袋を手に取り、開けた。中には赤黄緑白といった一般的な色のものから、灰色や濃緑・真紅といった目を疑うような色のゼリービーンズが詰まっていた。
「気を付けた方がいいよ。」
二人して袋の中を覗きこんでいたところに、ロンの注意が入る。
「百味って、ほんとになんでもありなんだよ。…そりゃ、普通のもあるよ。チョコ味、ハッカ味、マーマレード味なんか。」
――ゼリービーンズってそんな色んな味があるもんだっけ?
結悟はふっと思ったが口には出さなかった。
「でも、ほうれん草味とか、レバー味とか、臓物味なんてのがあるんだ。」
――レバーって臓物の事じゃ…
ジョージの体験した驚愕の味を聞き流しながら思ったが、やはり思うだけに留めておいた。
そんななかロンは緑色のビーンズをつまんで、よくよく見てからちょびっとだけ齧った。
「ウエー、ほらね?芽キャベツだよ。」
その後、三人でしばらく百味ビーンズを楽しんだ。結悟はココア、ゴマ、茹で卵、人参、キャラメル、マンゴーなどの味にあたった。
他に印象深かったのは、結悟にとっては懐かしいみそ味や、濃度の半端ない塩味など。ハリーが齧ったこしょう味を少し齧ってみたが中々に強烈だった。
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