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 その男の頭に生えている一対の、角。しかも鬼のような鋭く短いものではなく、言うならば、そう、

『竜の、角…?!』

 茫然と、そんなことあるまいと呟いた言葉はしかし。

『お、なんだお前バカじゃないんだな。』

 にやりと、男に肯定されてしまった。

『…うそだぁー……じゃあこのノリでアタシの杖の芯の髭の持ち主とか言ったりしないよね…?』

『言ったりするぜ?』

 いつの間にか胡坐をかいて座り込んでいる男が、にやにやと下から見上げてくる。

『んなアホな…。』

『あ゛?元土地神のこのオレに向かってアホだぁ?』

『あ、いや、そうじゃなくて…え、土地神?』

 こっちを物凄い眼力で睨んでくる男に思わず逃げ腰になるが、

『土地神って、え、じゃあなんでこんなとこに…てか、杖…?』

――マテマテ待て…何がどうなって…?

『…?何混乱してんだ?お前がオレを式に下したんじゃねぇか。』
『式ぃ??!』

――式って何?!

 先ほどまでの表情とは一転してきょとん顔で問いかけてくる男だが、しかしその内容は結悟を更に混乱させるものでしかなく。

『は?お前安倍の子孫…英治の孫だろ?』

『いや、そりゃおじいちゃんは旧姓アベだったらしいけど…え?ちょ、ちょっと待って。』

 このまま噛み合わない会話を続けても埒が明かないと思った結悟は、いったん向こうの言い分をまとめることにした。
 まずこの男は自称元土地神で竜だと言う。これは、まあ納得できる。
 次に、この男は式に下ったと言った。誰の?
 おそらくは自分のだろう。そしてそれは結悟がアベの子孫だからだと。

――え、それって、まさか…?!

 そう、結悟が思い当たった時。

『お前まさか何も聞いてねぇのか…?安倍英治っつったら日本の異能の世界じゃ有名だったぜ?
 あの安倍清明の再来ってな。』

『アベってその安倍かーー!!』

 思わず叫ぶ。確かに結悟とてアベと聞いて安倍清明をちらと思い出しはしたが。まさか祖父がその子孫だったとは。


 聞いていないどころか予想だにしなかった祖父の正体に只々驚くばかりだった。




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あきゅろす。
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