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‐017‐

『…――――、――、―――…!』

 声が、聞こえる。
 必死に、何かを訴えるように張り上げられた声が。

――またこの夢か…

 そう、それは、ここひと月ほどずっと見ている夢…いや、そう言うと少し語弊がある。
 最初はただ、何もない真っ白とも真っ黒とも言えない空間に独りぼんやりと浮いている夢だった。
 それが日を追うごとに何処からか何かが聞こえてくるようになり、その何かが声だと解ったのが十日ほど前だったか。
 それから声はさらに強く大きく聞こえるようになってきているのだが、何故か何を言っているのかが聞き取れない。
 あれほど必死に訴えているのが解るというのに、それを言葉として認識することが出来ないのだ。
 そして今日もまた例にもれず、この声を耳に残したまま目覚めるのかと結悟は溜め息を吐いた。

『…い、―――め、い…―――!』

――お?

 今何か言葉が聞こえなかったか。

『…めい?』

 小首を傾げて聞こえたような気がした言葉を呟いた、その時。
『オイコラテメーいい加減にしやがれ!!!』

 怒号が、響いた。

魔法学校隠密乱入記 ‐017‐




 びくぅっ、と体が飛び上がる。

『なっ、なっ、何…?!』

『何じゃねぇよテメー今まで散々オレの呼び声無視してくれやがって!!一体いつからオレがテメーを呼んでやってると思ってんだ?!』

――なんだこの微妙に俺様な男…!

 最初の怒号と共に、何かがさあっと引いていって。 目の前に居たのは、この何故か完全にブチ切れている男。
 あれだけ一気に怒鳴り散らしたというのにまだ気が済まないのか、あのクソ老木、とか寄生虫め、とか恐ろしく低い声でぶつぶつと呟いている。

『あ、あの……っ!?』

 声を掛けようとして、不意に気付く。

『あ?何だよ。』

『いやあの、えーと…』

 そんな結悟に気付いたのか男が声を掛けてくるが、結悟にはそれにうまく返す余裕などなかった。
 何故ならば、その男。

――つ、角…?!てか、格好もおかしくね?!

 憮然とした表情も露わなその顔は整いすぎるほど整っていて、その目は本来人間ならば白い部分が黒いように見える気がしないでもない上、ざんばらに伸ばされた髪も群青なのか青磁色なのか解らないがとにかく自然な人の髪色とはかけ離れているし、服装も日本とも中国とも西洋とも言えない古風なものだが、それよりも。


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あきゅろす。
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