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「そうじゃとも、そうじゃとも。まもなくお目にかかれると思ってましたよ、ハリー・ポッターさん。お母さんと同じ目をしていなさる。
 あの子がここに来て、最初の杖を買っていったのがほんの昨日のことのようじゃ。あの杖は二十六センチの長さ。柳の木でできていて、振りやすい、妖精の呪文にはぴったりの杖じゃった。」

 言いつつオリバンダーはハリーに近寄る。

「お父さんの方はマホガニーの杖が気に入られてな。二十八センチのよくしなる杖じゃった。どれより力があって変身術には最高じゃ。
 いや、父上が気に入ったというたが…実はもちろん、杖の方が持ち主の魔法使いを選ぶのじゃよ。」

 オリバンダーはそうして更に近寄る。

「それで、これが例の…」

 その白く長い指を、ハリーの額、稲妻型の傷跡に沿わせる。
 結悟が初めて見たそれは、誰もがひとつは持っているであろう過去の傷跡と同じように見えた。

――あんな小さな傷跡が、斬れない絆を作り繋いでいる…

 彼の者を滅びへと還す、絆を。そう考えると背筋が凍った。

「ルビウス!ルビウス・ハグリッドじゃないか!また会えてうれしいよ…四十一センチの樫の木。よく曲がる。そうじゃったな。」

 いつの間にか話は進んでいたらしい。

「ああ、じいさま。そのとおりです。」

「いい杖じゃった。あれは。じゃが、おまえさんが退学になった時、真っ二つに折られてしもうたのじゃったな?」

 急に険しくなったオリバンダーの声。

「いや…あの、折られました。はい。」

 居心地が悪そうに身じろぎしつつ答えるハグリッド。

「でも、まだ折れた杖を持ってます。」

「じゃが、まさか使ってはおるまいの?」

 ぴしゃりと言うオリバンダー。

「とんでもない。」

 慌てて答えるがしかし、ピンクの傘の柄をギュッと握ったのはバレバレだった。

「ふーむ…」

 ハグリッドを探るように見ていたオリバンダーだたったが、結悟に目を止めると途端にこちらへ寄って来た。

「これはこれはこれは…なんとも奇妙な縁があったものじゃ…おまえさん、名前は…?」

 その勢いに完全に押されつつ、何とか返す。

「ユイゴ・スエヒロ、です。はじめまして…」

「そうか…ヒデハル・アベ、彼は、いや彼も不思議な人じゃった…十九センチ、黒檀のしなりにくいが力強い杖じゃ。あれほど短い杖を使うものは後にも先にも彼だけじゃろうて。」

 うんうんと頷きつつオリバンダーは言う。

「さて、では、どちらからにしますかの。」

「あ、じゃあ、ハリーから先に。」

「え、ユイゴ?!」

「では、ポッターさん。拝見しましょうか。」

 じとり、と睨んでくるハリーにひらー、と手を振っておく。

――まあ、頑張れ。


 次々に杖を変えられ悪戦苦闘するハリーをみて、微笑ましさにひとりにやける結悟であった。





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