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‐015‐

「じゃ、ホグワーツでまた会おう。たぶんね。」

 店を出るハリーと結悟に、男の子はそう言った。

魔法学校隠密乱入記 ‐015‐



 店を出て、ハグリッドからアイスクリームをもらって。ハリーが黙りこくっているのはそれを食べるのに夢中になっているからではないだろう。

「どうした?」

 流石に気付いたハグリッドが問うが、

「なんでもないよ。」

 ハリーはそう言うだけだった。一体どうしたのかとハグリッドがこちらを見てくるが、気にしているのはハリーなのだから自分が言っても仕方ないだろうと思い、結悟は肩を竦めるにとどめた。
 それでも買い物はしないといけない訳で。次は羊皮紙と羽ペンを買った。実は結悟が羽ペンに触るのは初めてだった。

――部屋にはノートと万年筆があったもんなぁ…

 あれは十中八九祖父の遺したものだろう。サンプル品をもてあそびつつ、思う。
 つけペン自体は使ったことがあったから、まあこれも使えないことは無いだろう。ついでに何色かのインクを買って、店を出た。

「ねえ、ハグリッド、クィディッチってなあに?」

 少し気分が戻ったのか、ハグリッドにそう訊くハリー。しかしそれにハグリッドは大げさに反応し。マダムの店での事を話せば、クィディッチの事ではなくハリーの両親がいかに素晴らしいかを語り出した。

「…お前の母さんを見ろ!母さんの姉妹がどんな人間か見てみろ!」

「ハグリッド、完全に話がそれてる。ハリーが訊いたのはクィディッチについてでしょ。」

「あ、おお、そうだった。あー…クィディッチっちゅーのはな、俺たちのスポーツだ。魔法族のスポーツだよ。マグルの世界じゃ、そう、サッカーだな――誰でもクィディッチの試合に夢中だ。箒に乗って空中でゲームをやる。ボールは四つあって…ルールを説明するのはちと難しいなあ。」

「要するに、箒に乗って空中で四つのボールを投げたり取ったり打ったりして点数を競うスポーツってとこ。その辺はおいおいわかっていけばいいと思うよ。」

 ううむと唸るハグリッドに、少々投げやりな結悟の補足。

「そっか…じゃ、スリザリンとハッフルパフって?」

「学校の寮の名前だ。四つあってな。ハッフルパフには劣等生が多いとみんなは言うが、しかし…」

「僕、きっとハッフルパフだ。」

 落ち込んだようにハリーが言った。

「スリザリンよりはハッフルパフの方がましだ。」

 ハグリッドの顔が曇る。

「悪の道に走った魔法使いや魔女は、みんなスリザリン出身だ。“例のあの人”もそうだ。」

「ヴォル…あ、ごめん…“あの人”もホグワーツだったの?」

「昔々のことさ。」

 そう言ったハグリッドは一体どんな気持ちだったのだろう。自分の学生生活を思い出して、自分の同寮生を思い出して、彼は何を思ったのだろう。

――さすがに訊けないけどさ。

 その後は教科書を買った。“フローリシュ・アンド・ブロッツ書店”は、結悟にとってまさにパラダイスだった。
 天井までぎっしり高く積み上げられている本、敷石ぐらいの大きな革製本、シルクの表紙で切手くらいの大きさの本、他にも沢山たくさん。
 いくつか本当に心惹かれる本があったが、部屋の本棚の本すら読み切っていないのだからと諦めた。
 ハリーはよっぽど呪いの指南書が気に入ったのかハグリッドに無理矢理引きはがされて店の外まで連れられてきた。
 次に大鍋を買った。ハリーは純金製の物を欲しがったがこれもまたハグリッドに却下されていた。大鍋なんか汚れてなんぼの物だ。こんなものを金で作るなんて、結悟には理解できなかった。



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