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不審に思って振り返れば、何かを言いたそうな顔のハリー。
「どうかした?」
「あのさ、僕の事ハリーで良いよ。だから、僕もユイゴって呼んでいい?」
意外なその申し出に、きょとんとする結悟だったがややあって、
「ああ、うん、わかった。それじゃあ、行こうか…ハリー。」
「うん。」
――なんか…懐かれた?
あまり深く関わらないようにしようと思ってはいたのだが、どうやら無理そうだった。
そうして店に入ると、マダム・マルキンがお出迎え。
「坊ちゃんたち、ホグワーツなの?」
ハリーが何か言う前に、マダム・マルキンはそう言った。
「全部ここで揃いますよ…もう1人お若い方が丈を合わせているところよ。」
そう言うマダムの視線をたどると、なるほどそこには少年が居た。青白い肌に尖った顎、金髪を撫でつけて、どこかふんぞり返っているような印象を受ける。
ハリーと結悟がその隣の台に立つと、男の子が声を掛けて来た。
「やあ、君たちもホグワーツかい?」
「うん。」
「僕の父は隣で教科書を買っているし、母はどこかその先で杖を見てる。」
訊いてもいないのに、その男の子は気だるそうに言う。
「これから、二人を引っ張って競技用の箒を見に行くんだ。一年生が自分の箒を持っちゃいけないなんて、理由がわからないね。父を脅して一本買わせて、こっそり持ち込んでやる。」
――この餓鬼…。
まったくもって子供らしいと、結悟は思った。
自分の境遇に疑問も持たず、両親はただ自分のためにあると心の底から思っている。
血筋が故に己は格が高いのだと信じて疑わず、また己よりも本当に優れている者など居ないのだとすべてをなめてかかっている。
まあなんとご立派なご子息様だことでしょう。…そんなところか。
――んなこと言えるほど、アタシも大人じゃないけどさ。
思うだけなら自由だろう。などと思っているうちに話は進んでいたらしい。
「言うなれば野蛮人だって聞いたよ…学校の領地内のほったて小屋に住んでいて、しょっちゅう酔っ払って、魔法を使おうとして、自分のベッドに火をつけるんだそうだ。」
――お前のベッドに火ぃつけてやろうか。
反射的にそう思って、自分もまだまだ子供だなあとため息を吐いた。
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