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‐011‐

 時が経つのは速い時は速いもので、気付けば結悟がこちらの世界に来てからおおよそひと月がすでに経っていた。
 向こうの世界では自分の扱いがどうなっているのか多少は気になったが、向こうには家族を除いて特に親しい人など居なかったし、家族は…特に祖父あたりは事の次第の見当がつくだろうからと特に心配もしていなかった。

魔法学校隠密乱入記 ‐011‐



 朝の陽が差し込む。
レースのカーテン越しにそれを感じた結悟の瞼がかすかに震え、一瞬の後にふっと、開いた。

『あさ…』

 むくり、と起き上がり何の気なしにふと窓を見やった結悟は、そこに丸いもこもこした鳥…梟の姿を認め、慌ててベッドから降りる。

『ごめん気付かなかった!』

 窓を開け梟を迎え入れながら、言う。
この梟は結悟が初めて出した手紙を任せた梟だ。
 学校の梟ではあるが結悟にいたく懐いているうえに、いつの間にやらこの部屋に住み着いてしまっていたので、今では結悟のペットのような扱いになっている。

――毎回毎回、ガラス突っついてくれればいいって言ってんのに…

 どうもこの子は律儀というか遠慮がちというか気が長いというのか、結悟が自分に気付くまで何もせずじっと待っているのだ。
 種類で言えばコキンメフクロウという、縦縞模様が特徴で動きは俊敏、神経質で攻撃的な梟として知られているものなのだが。

『まったく…緊急の時は遠慮しないでよ?』

 その梟(勝手に結悟はカフと名付け呼んでいる)が銜えていた分厚い羊皮紙の封筒を受け取り、うりうりと人差し指で人で言う眉間の辺りを撫でる。
 流石にこれはカフも嫌なようで非難の声を上げた。

――可愛いなぁ…

 その様子に思わず頬を緩め、指を離すと小皿とふくろうフーズを呼び寄せ、カフの前に置いた。
 それを突っつき始めるのを横目で見つつ、結悟は封筒をひっくり返す。
 そこにはエメラルド色のインクで、

ホグワーツ城、
絵画の守部屋
ユイゴ・スエヒロ様

と、そう書いてあった。

 もう一度裏返して蝋封を見れば、紫の蝋で中央の“H”を囲むように獅子鷲穴熊蛇が描かれている。
 ホグワーツの、入学案内だった。

――今更?!これって7月31日必着じゃなかったっけ?!

 素早く壁のカレンダーに目をやれば、今日は7月30日。
 とにかく急いで開封し、中身を見る。予想通りに紙が二枚、そして小さな羊皮紙が一枚。

『…?』

 こんなもの本来入っていたかと思い、それを取り出して読む。

――あ、アルバスさんの字だ。…えーと、
  “君は入学が決定しているが、一応決まりなのでの。それと、今朝ハグリッドを彼の迎えにやったから明日にでも学用品を買いに行くじゃろう。その時にユイゴ、君も一緒に買うと良い。”
  …なるほどな。

 学用品リストにもざっと目を通し、明日の事を思い苦笑。
 初のダイアゴン横丁は確かに楽しみではあるのだが(今まで何か用があればホグズミートへ行っていた)、そこで出会うであろう“物語”の中心人物たちを思うと複雑な思いに駆られた。



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