-008-
最初は、訳が分からなかった。そして、信じられなかった。
それが、今ではどうだ。すっかり納得して、馴染んでいるではないか。
…まるで、そう、言うならば久々に実家にでも帰ってきたように。
魔法学校隠密乱入記 ‐008‐
「…アルバスさんは、」
すう、と息を吸って、
「アルバスさんは、ヴォルデモートかその部下…死喰い人達が異世界の存在を知ることを懸念しているのですね。」
そう、言う。
「ほう、知っておるのじゃな。」
声こそなんでもなさそうだが、ダンブルドアのその瞳には疑問がちらりと見える。
「物語として、読みました。この世界の未来や…過去も、少し。」
結悟も、何でもない風を装って言う。
「例えば、ヴォルデモートの本名がトム・マールヴォロ・リドルだって事とか、アルバスさんがゴドリックの谷に住んでた事とか…今年、」
ハリー・ポッターが入学する事。そう言おうとした。言おうとした、のだが。
「……っ?!」
――声が…?!
声が出なくなった。
それだけではない。唇は思いに反して一文字に閉じられ、手も足も眼球に至るまで動かせず身じろぎすら出来ない。
「なるほど、未来については他者に伝えられないように規制が掛けられているようじゃな。」
「規制、って、誰に……っ!」
今度は恐ろしくするりと言葉が出た。
「さての…それはわしにも解らん。しかし誰に、ではなくもっと大きな何かによるものじゃろう。」
「そんな…」
――アタシの発言の自由奪いやがってチクショウ…
ぎ、と奥歯を食いしばる。
「…何にせよ、君には随分と不自由な学生生活を強いねばならんのう。じゃが…」
そう言ったダンブルドアは、懐から何かを取り出し結悟に差し出した。結悟は立ち上がり、それを受け取る。
「これはグリンゴッツの金庫の鍵じゃ。ヒデハルはあまりお金に関心が無かったのじゃが、それでも幾つか金庫を持っておった。」
そう言われ、結悟は受け取った鍵を見る。
「幾つか、って…おじいちゃんどんだけ稼いでたんですか…。」
「ふぉっふぉっふぉ…彼の視点はそれほど価値があったのじゃよ。その鍵はヒデハルがホグワーツを去る時に預けられた物での、必要とする奴にあげてくれと言われたのじゃが、わしは君にそれを返そう。」
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