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――この人…?!

 豊かな黒髪、切れ長の一重、きりりとした眉、どこかぎこちない笑みでこちらを見ている彼。自分の記憶にある姿からは想像できないくらい若いが、それでも。

「おじい、ちゃん…?!隣に居るのは…アルバスさん?」

「左様。これで確信が持てたことじゃし、本題に入ろうかの。」

 顔の前で手を組み、真剣な目でこちらを見てくるダンブルドア。

「…昔の話じゃ。わしがまだここに教師として働き始めていくらもたっておらんかった頃、ある一人の日本人がホグワーツを訪ねてきた。」

――まさか、その人が…?

 結悟はそう思ったが口には出さなかった。

「左様。彼の名はヒデハル・アベ。アベと言えばこちらの魔法界でも多少有名じゃが、まあこれはいいじゃろう。
 とにかくヒデハルは単身でイギリスまでたどり着き、このホグワーツの門を叩いた。日本で学んだことに飽き足らず、貪欲に知識を求めたのじゃ。
 ホグワーツは彼を管理人助手という扱いで受け入れた。生徒として受け入れるにはちょいと歳を取りすぎていたのでの。
ヒデハルはわしとそう遠くない歳じゃったから、わしらはすぐに意気投合し親しくなった。」

「彼の知識欲は、彼がもし入学したとすれば間違いなくレイブンクローに入っていたと確信する程じゃった。…いや、彼ならどこでもやって行けただろうの。
 こんな言い方をすると君は嫌がるかもしれないが、ヒデハルはわしと何の気遣いもなく論争出来るほど頭が回ったし、また魔法の才能もわしと同等かそれ以上じゃった。」

 ダンブルドアは語る。

「ほんの5年も経たないうちに、ヒデハルはホグワーツの7年生よりもはるかに多くを学び、理解し、自分の物にしておった。同時に、出来る事も7年生よりはるかに多かった。
 じゃから彼が呪文学の教師になったことには皆それほど驚かなんだ。人づきあいがそれほど得意ではなかったが、授業はなかなか人気があったようじゃ。」

 そこでダンブルドアは一旦切り、どこか遠くを見るように目を細めた。

「さて、どこまで話したかの…おお、そうじゃ。
そうしてヒデハルは教師として教える傍ら、西洋の魔法を東洋の考えから見た斬新な論文をいくつも発表していったのじゃ。
 知名度は年を追うごとに増し、魔法省への勧誘もたびたび聞くようになった。しかしヒデハルはある時いきなり、研究に専念したいと言ってホグワーツを飛び出して行ってしまったのじゃ。」

「ヒデハルは西洋魔法の、とくに物質の消失・出現に強い関心と疑問を抱いておっての。ゼロから何かを作り出すことは出来ないはずだ、と常に言っておった。
 そこで彼が考え付いたのが、すべては召喚によるものではないのかという考えじゃ。」

「ヒデハルはこの世界とは別に世界があり、そこからわしらは物体を召喚したり逆召喚したりしていると考えたのじゃな。
 それを解りやすく証明するために彼が何を行ったか、解るかね?」

 淡いブルーの瞳が期待するように結悟を捕らえる。

「え−、っと…召喚・逆召喚ってことは、持って来たり返したりって事ですよね…しかもそれを解りやすく…?ってことは明らかに目に見える形で…?」

 あーとかうーとかうなりつつ考える結悟。

――別の世界からってのはなかなか証明しにくい事だから…単純に離れた場所からの召喚…?
  …あ。

「この、リングとブレスレットですか?」

 両手を机の上に置いて、言う。

「いかにも。」

 そう言ってダンブルドアは満足そうに微笑む。

「…でも、それじゃあ証明にはならないんじゃないですか?」



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あきゅろす。
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