-006-
――いやいやまさか。だってねえ、いくらなんでも…
そう思いつつも思い起こされる幾つかの事。
例えば、祖父がまるで絵本の魔法使いのような杖を持っている事。
例えば、祖父の婿入り前の写真を見たことがない事。
例えば、祖父の旧姓はおろかどこに住んでいたか、どんな家だったのかすら話してもらったことがない事。
例えば、時々思い出したように結悟の頭を撫でては、どこか悲しげな顔をしていたこと。
思い出せば思い出すほど違和感が浮かんでくる。
そういえば祖母との馴れ初めも、一度だって話してもらったことは無い。
――お爺ちゃんがこの世界からアタシの世界へ来たんだとすれば…
ダンブルドアは何かによってこの世界に引き寄せられて来たと言った。その“何か”とは、このブレスレットとリングではないのか?
もしかして、ダンブルドアは、祖父は、こうなることを解っていたのではないのか?
――だったら、なんで…
魔法学校隠密乱入記 ‐006‐
『客人が御出でなさりましたわ。』
『っ?!!』
びくぅっ、と体が跳ねる。不意に響いたのはミヤビの声だった。
――ど、どこから?!
慌てて辺りを見渡せば、机の上に置いてある風景画だと思っていた小さな絵にミヤビの姿が。
『み、ミヤビさん…?何で…?』
『私たちは絵の間を移動できますの。』
つっけんどんに言うミヤビ。やはりというか、まったく信用も信頼もされていないようだ。
『あ、はい、それは知っていますけど…ミヤビさんの絵から壁繋がってないじゃないですか。』
『ふふ、私はそこいらの絵とは格が違うんですのよ?』
『…さいでか。』
にこり、と妖艶に笑うミヤビに何か黒い物を感じた結悟だった。
『それより早く許可を下さらない?』
『許可?』
『そう。この部屋は主の許可がない限り何物の侵入も不可能ですことよ。』
どこか得意げに話すミヤビ。
――だからこんな埃まるけだったのか…。
ホグワーツには屋敷しもべ妖精が居た筈なのに、と思ったがそういうわけだったのか、と納得する。
とにかく、誰かが訪ねてきたのならそれはおそらく朝食を持って来てくれたのだろう。ならば長々と待たせるわけにはいかない。
――いろいろ気になることだらけだけど…今ここで考えても仕方ない、か…。
『えーと、どうぞお入りください…。』
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