-005-
戸を引いたその先は、埃まみれの部屋だった。
「うーわー…」
思わずそう言ってしまう程に、埃の積もった部屋だった。
「だ…アルバスさん、コレ…」
「もうこの部屋は君の物じゃからの、好きにするとよい。」
「好きにって…配置とか窓とかも弄っちゃっていいんですか?」
「かまわんよ。整理が終わった頃に朝食を届けよう。」
「…りょーかいです。」
魔法学校隠密乱入記 ‐005‐
――とにかくまず、埃を如何にかしないと…
左手をさっと、払うように振る。すると、部屋中の埃が球状に、左掌の下数センチのところに集まる。
それを体の前に持ってきて、右手とで挟むようにすると圧力がかかり埃が圧縮され、ピンポン玉くらいの大きさになった。
――とりあえず掃除終了、か?
灰色の球をぽいとゴミ箱に放り投げると部屋の中に足を踏み入れ、背後の戸というか絵を閉める。
見渡せば、目を見張るほどではないがそれでも1人が暮らすには十二分の広さだ。
正面には大きく取られた窓、そのすぐ手前に机と椅子、その右脇に大きな本棚、いくらか右にずれてベット、壁際にクローゼット。
――クローゼット、魔法で固定してあんのかな…
ベットの近くにそういうものがあると、つい地震を心配してしまうのは日本人の性なのか。そんなことを思いつつ窓に近寄る。
『オイオイオイオイ…開かないって…』
採光に配慮してはあるが、これでは空気が淀むばかりだろう。机に左手をつき、右人差し指を振る。
リィン…と微かに鈴の音が響いて、窓がはめ込み型から両開き型に組み替えられる。
そのまま振り返れば、石壁とキャンバスの裏地が見えるのみ。
――………通気、わっる…
若干引きつりつつ、また指を振る。微かな鈴の音と共に額の上の石がいくつか外れ、通気口が出来る。
――で、あとは…
部屋の入り口から見て左側には、簡素なキッチンと扉。開けてみるとその先は、
『ユニットバス…まあ仕方ないか…。』
お風呂があること自体が驚きなのだから。先ほど同様埃を取り、ダストシュート。見事命中。
――さすがにシャンプーとかは無い…か。
石鹸があったであろう箱はあったが、中身は当然ながら何もない。
部屋に戻り、戸棚やクローゼットなどを開け埃を取る。ひと段落つくと、次はベッドカバーやカーテンが気になってきた。いかにもな時代を感じざるを得ない柄や色だったからだ。
――んー…何色がいいかな…
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