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 途端に服がジーンズが縮み、体に合った大きさになる。
 これでいいのかと老人を見やれば、いっそうきらきらとした、満足そうな目とかち合う。その後ろの女性二人が驚愕の表情を見せているのはもう気にしないことにした。

「いやはや見事じゃ。」

 そう言いながら、老人はまた杖を一振り。足元にスニーカーが現れた。

「では行こうか。」

 そう言って歩き出す彼の後ろを、結悟はスニーカーを履いて迷いなくついていくことにした。
 そうして冒頭に戻るわけである。

「…あの、質問いいですか。」

 慣れない体、いつもと違う歩幅、まるで自分のものではないような声に辟易しながら、結悟は前を進む老人に訊いた。

「なにかの。」

「…今って、西暦何年ですか?」

「1991年じゃよ。」

 さらりと言ってのける老人。

――1991…って、10年前?!

 すると単純に考えて今の体は7歳と言う事になる。

――7歳…こんなんだったっけ…

 右手を目の前にかざして、握ったり開いたり掌を返してみたりする。その人差し指にはまっている指輪が目に入り、はっと気付く。

――MDプレイヤーと時計!!!

 ばっっ、とジーンズのポケットに手を当てる。そこには確かに四角い感触があった。
…しかし時計は、無い。

――図書室に落としてきた?アタシの部屋に落としてきた?

 はたと立ち止まって考える。本襲撃の衝撃ですっかり忘れていたのだが、左手に持っていた時計が今はどこかへ行ってしまったようだった。

「…どうしたのですか?」

急に立ち止まった結悟を訝しんで黒髪の女性が問うてくる。

「いえ…いや、なんでもない、です。」

――この先どうなるにしろ…もっかい図書館に寄るくらい許してもらえるだろ。うん。

 立ち止まった事を詫びて、また歩き出す。
 ほどなくして一対の石像が見えてきた。と。

「蛙チョコレート」

 老人が石像に向かってそう言うと、石像はまるで息を吹き込まれたかのようにぴょんと飛び退いた。


もう何があっても驚くまい。そう結悟は思った。






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