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これも大切なもののひとつで、これも確か10歳の誕生日に祖母から貰った。何があっても動き続けるように作られている、らしい。
キン、と小気味良い音を立てて時計を開ける。
長短の二本の針は7と12を指していた。
「は、7時?!…マジかー。」
――晩御飯食べ損ねた…てか何で誰も呼んでくれなかったんだ
…いや、アタシが気付かなかっただけ?
末廣家の夕飯は冬は6時半。特に理由がない場合30分が過ぎると他の人に自分の分が食べられてしまうのだ。
結悟は一人っ子だが、一緒に住んでいる母の姉夫婦は男ばかりの3人兄弟なのだからなおのこと容赦はない。
因みに今末廣本家には祖父母に結悟の両親、母の姉夫婦とその息子たち、それに結悟の10人が住んでいる。
――あー…マジやる気失せたー…
ぐぐ、と背もたれに体重をかけて、脱力。両手を伸ばして上半身を反らし、
「あ。」
ガキュ、と椅子のキャスターが変な音を出して。
――やべ。
思った時には頭から後ろへ倒れていた。
反射的に目を瞑って、次に来るであろう衝撃に備える。と、
――…お、?
体の芯がぐにゃりと、曲がるような捩れるような妙な感覚がした。
のちに、一瞬の浮遊感。
――は?
そしてドスン、尻餅をついた衝撃。慌てて目を開けると、
――え、ちょ、
ほんのすぐそこまで迫りくる無数の四角い影が。
――〜〜〜っ!!
ヤバイ、と思った時にはもう遅く、四角い影は次から次へと降ってきて結悟の上に積み重なった。
ばさばさどさどさという音と微かにどこかカビ臭いような埃っぽいような空気に、降ってきたのは本だと理解。
「…はは、防衛本能ばんざーい……」
結悟は本に潰されてはいなかった。
最初の本が結悟の頭に当たるほんの一瞬前、本能的に能力が反応して結悟を半球状のバリアで覆ったのだ。
とは言っても、降ってきた本はどれも大きく、しかも数も相当なようで可能な限り首を回して見てみてもせいぜい針の穴のような隙間しか空いていない。
また、そこから射してくる光も弱弱しい。
――どこだココ…図書館?
これだけの本があるのだからきっとそうだろう。それなら誰か利用者が居るはず。
『おや、まあ!!』
女性の声。やはり誰か居たようだ。
ただし、聞こえたそれは日本語ではなかった。
――…英語?
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