[携帯モード] [URL送信]

短編3
黄金色の羽根
 黄金色の羽をなびかせて。
 その鳥は、空を飛ぶ。


 その羽根が一枚抜けて、ひらりと地に落ちる。
 羽根は光を帯びていて、眩しく辺りを照らし出した。

 羽根を拾ったのはひとりの老婆。
 羽根は閉じ込められて、必要な時だけ取り出された。

 闇を祓う灯りとして、羽根は使われる。
 そのうちに、美しい羽根は話題を呼び、噂として流れ出す。

 ある日、とある若者がその羽根を尋ねてやってきた。
「その羽根をわたしに譲って下さい」

 そうして羽根は再び飛び立つこととなる。
 けれどその先でも、羽根はとらわれたままだった。

 羽根は所有物である。
 羽根は愛玩物である。

 羽根は檻の中で。
 羽根は鎖につながれて。

 羽根は主の望みの通りに。
 羽根は逆らうことなく。

 やがて羽根は懐かしい過去を思い出して、ひと粒のしずくを零す。
 まだ、羽根が温かく優しい場所の一部であり、そこから離れる前のこと。

 羽根の涙はひとつの命となった。
 羽根から生まれたそれは、鳥となって空を飛ぶ。


 その日、何人もの人間が黄金色の美しい鳥を見た。
 気高いその姿に感嘆の声があがる一方で、羽根は地に伏して静かに消えてゆく。

*前次#

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!