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不器用な束縛

冷たくて傲慢で、でも惹きつけられる、支配者の目。
僕はあの目に見つめられると、動けなくなってしまう。
心臓を人質に取られたみたいに、捕らわれて、どうしようもなく泣きたくなる時がある。
「執着の目だな」
「え…?」
「悠生、逃げるなよ。厄介だ」
星野先輩に釘を刺される。
親衛隊を辞めようとした事、見透かされているっぽい。やば。

生徒会長―――九重鷹也(ここのえ たかや)―とは、中学からずっとそういう関係だった。
僕は親衛隊に興味はなかったし、まさか自分が入隊なんて考えてもいなかった。或る日、彼が『親衛隊に入って隊長になれ』なんて、ピロートークの延長で言ったから快感の余韻でうっかり頷いてしまった事がそもそも!!!
滅茶苦茶あの日に帰りたい。
自他共に認める面倒くさがりの僕にそんな大層なお役目がそう易々と出来る訳がない。
それでも続けて来られたのは、曲がりなりにも僕は彼の事を好いているし(あまり言いたくはないけど)…あと星野先輩と篠崎先輩の力も大きい。
過去に彼等も親衛隊で隊長職を務めていたから、色々と助けて貰ったりした。……主に篠崎先輩に。
だって星野先輩が仕切ると、何でも恐怖政治なんだもん。







「あー!早く!早く倒して先輩」
「落ち着け、回復してやるから自分で倒せ」
食堂…いや、星野先輩と九重の視線から逃げ出して、携帯ゲーム機片手にやってきたのは東舎屋上。
ここには、僕の癒しがある。
「倒してー!ギガデイン唱えて早くっ」
「お前、科白と表情が合ってねぇ」
「スーパースター死んだ!相良先輩のせいで」
「待て」
結局、先輩に殆どやって貰って俺は無事に暗黒皇帝ガナサダイを倒すことが出来た。
なんだこいつ、第二形態あるとかフリーザ様かふざけんな。
「おい、もうすぐ五限始まるぞ」
僕にそう言いながら、相良先輩――相良修平先輩は動こうとしない。
明らかにヤバそうな不良な外見な先輩は、その外見を裏切らず不良だ。中等科の頃は『狂犬』とか結構恥ずかしい名前で呼ばれてた気がするけど、今はなんというか…落ち着いた不良?
とりあえず、喧嘩は院内一強いけど別に排他的でもなければむやみやたらに他人に危害を加えるわけでもない。
寧ろ優しくて、星野先輩や茅場元会長に比べたら余程まともで理性的に見える。
一緒にドラクエやってくれて、話をしてくれて、頭を撫でてくれて。
表情が乏しい僕の気持ちを正確に汲み取ってくれる、稀な人。
疚しい気持ちはなく、僕は先輩が大好きだ。恋愛感情で先輩を好きになっていたら、良かったのかなあと最近はよく思うけれど、先輩には片想いしてる人がいるらしいから、最終的に僕は失恋でふてくされて九重と寝ていたかもしれない。
不毛だ。
「先輩の好きな人ってどんな人?」
エルギオスに話し掛けながら、先輩にも話し掛ける。
「…偏食で性格が悪い」
ゲームに付き合ってくれながら、先輩はどこか苦々しく言った。
偏食で性格が悪いってネガティブ要素しか上げてないんですけど。
「そんな人のどこがいいの?」
「すげー綺麗で、頭がいいところ」
即答だ。
偏食で性格が悪いところを差し引いても、許せるぐらい美形で頭がいいのだろうか。
惚れた欲目?贔屓目?
なんだかこんな美形がずっと片想いなんて、信じられない気がする。勿体無いよ、先輩の想い人さん。
先輩こんなに素敵なのに。
「お前は九重のどこがいいんだ」
「………別に、ただのセフレだし」
「眉間に皺寄ってるぞ、珍しい」
ああ、言うことをきかない表情筋が憎い。
こんな時だけ雄弁に語らなくてもいいのに。
「……」
僕は、心と体が切り離せないタイプの人間なんだ。
九重とは違う。
つまり、結構な期間、僕は九重鷹也に片想いしている。
その事実はずっと僕にとってストレスだった。

「…エルギオス、チート!」
「仕方ねぇだろ」
「ねー南舎に行こう?日当たりいいし、見晴らしいいし」
「………あそこは…なんとなく行き辛いんだよ」
「なんで?」
「…大人の事情」


1歳しか違わないくせに!



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