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俺の執事はお嬢様
此処にいたら、危ない気がする
一瞬だった。
何が一瞬だったのかというと、沢田綱吉が私を女だと気づくまでの時間だ。

代々ボンゴレのボスは人を見抜く力に優れていると聞いた事があるけれど、
そんなのは関係なかったと思う。


だって、彼は私の事を雄の目で見てた。
最初に視線を交えたときからずっと。

「私って……そんなに女くさいかな?」
広すぎる廊下には、私の声だけが虚しく響く。
と、そこにカツンという乾いた靴の音がやって来た。
リーゼントにスーツという不釣り合いな格好の男と共に。

「ん…?誰だ、お前は」

「え……っと、本日から綱吉様の執事をさせて頂いている者です」

すると、このパンチの効いた男は一瞬いぶかしげな顔をしたが、すぐに自らの名前を名乗った。

草壁さん、というらしい。


「風紀財団、という組織で雲雀の部下をしております。
一度会っておきますか?」
ヒバリ…さん?
どこかで聞いた事があるような…。

「あっ」


ボンゴレ十代目雲の守護者!!

「もちろんです!
一言あいさつをしておかなければ…!」

「そうですか、ではこちらです」
なんか草壁さんって見た目恐いけど優しい感じ。
どこにいるんだろう、その雲雀さんって人は……。
リボーン様の話では、守護者の中じゃ最強って言われてたけど。

「あ、そういえば何か用事があったのではございませんか?」

「あぁ、沢田さんへの報告書なのですが、急ぎではないので」

それなら安心。
というか、どこへ向かっているんだろう。
このアジト、迷いそうなくらい広いからな…。

「我々の風紀財団と沢田さんのアジトは繋がっているのです。
もっとも、雲雀本人がここを通るのはごくまれにですが」

へぇ、変わった人。
会ってみたいという気はするけど。

「恭さん、客人です」

あ、此処か……。

「中は座敷なので靴は脱いで下さいね」
それは目の前に襖があるから分かるけど。
こっちの廊下は思いっきり和なテイストだ。

そんな事を思っていると、中からは「入りなよ」という低い声が聞こえてきた。

「失礼します………」

と、頭を少し下げて挨拶をする。


次の瞬間、私は目をまん丸くして数手先にいる人物を見てしまった。
だって、こんなにも綺麗な人は今まで見た事が無かった。
男の人なのに、なんだか艶めかしい、とにかく綺麗なひとで。





「――ねぇ、何さっきからこっち見てるの」

そう言われて、ハッとした。
どうやら、惚けてしまっていたらしい。
恥ずかしさから、顔が熱くなってくる。

「すいません…」

「あと気になったんだけど、
なんで執事の格好なんかしてるの、君」

いきなり触れて欲しくない所を突かれて、ドキリとした。
けど、言ってもまずい事はないので事実を話す事にした。

そうしたら、私の下手な説明でも一応は分かってくれたらしい。

「ふぅん…赤ん坊の紹介で……
だったら君、強いんだ?」

「…え?」
私が女だという事は分かってくれたはず、だよね?
なのに、なんで……

雲雀さんの手には、ギラリと光る金属製の“トンファー”いう奴が握られているのだろうか。


背中に嫌な汗が伝った。

「きょ…恭さん!!この方はあくまでも女性ですよ!?」

「分かってるさ、だからこそドン・ボンゴレの側近に相応しいかどうかを試そうとしているんだろう」

…あれ。

此処にいたら、危ない気がする。



「君の力を見せてみなよ」

ああ、お父様、お母様。
どうして世の中には無駄な戦いが起こるのでしょうか。


…なのに。

あの好戦的な瞳に宿る光が、
美しいと思っている自分がいた




私は争う事なんか嫌いなはずなのに。


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あきゅろす。
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