「じゃあ、あの辺で食べよっか」
屋上に着いて兄貴が言った。何故お前が仕切る!そう思ったけど、良さそうな場所だったので口には出さずに黙っていた。でも兄貴が一緒にお昼を食べるという行為が私としては許せないので、なんとなく顔がひきつってる気がする。
「どうしたんじゃ深空?そんな顔して」
やっぱり顔がひきつっていたみたいで、隣にいた雅治先輩が尋ねてきた。
「なんでもないよ。ただ兄貴が嫌いなだけ」
そう言うと雅治先輩は笑った。そして「休みの日にな」と私の頭を撫でてくれた。うん、かっこいい!私は雅治先輩が詐欺師なんて呼ばれている理由が分からない。こんなに素直で素敵なのに。
「そこ!何コソコソしてるの」
「何でもないぜよ」
雅治先輩が小馬鹿にしたように笑うと、両者とも睨み合いだした。でもそんな姿でさえも、やっぱりかっこいい。もちろん雅治先輩がね。
「どうしたんだ?」
既に座っていた真田さんがこちらを向いて話掛けてきた。
「あ、すみません」
真田さんをほったらかしにしては悪いと思った私は、真田さんの元へと走り、側に座った。雅治先輩たちは未だに睨み合ってるようなので、邪魔しちゃ悪いと思い、雅治先輩を応援しつつ真田さんと先にご飯を食べ始めることにした。
「真田さんのお弁当って美味しそうですね。誰が作ってるんですか?」
「これは、母が作ってくれている」
「へえ。料理上手なんですね」
「1ついるか?」
「いいんですか!?」
私は真田さんから厚焼き卵を貰った。これが、冷えているのにふっくらしていて、そのうえ味が引き締まっていて美味しい。
「うむ、しかし深空の弁当も上手そうだな」
「本当ですか!?これ、私が作ってるんです!そうだ。試しに1つ食べてみて下さい」
「いいのか?それでは……」
「はい。どうぞ」
真田さんが私のミートボールを食べようとしたところに、雅治先輩たちの声が聞こえた。
「「さ な だ ?」」
すごい顔をした雅治先輩と兄貴がいた。
「(もう睨み合い終わったんだ)」
「何してるのかな?」
「何しとるんじゃ?」
「(おっ、またハモったよ!)」
私がぽーっとしながら呑気にその様子見ていると、真田さんが二人に襲いかかられそうになっていた。私は勢いよく立ち上がり真田さんをフォロー!
「真田さんは私のお弁当を食べようとしただけなの!」
「「深空の弁当を…?」」
「フフっ、覚悟は出来てるよね?真田……」
逆効果だったらしく、兄貴は真田さんを足蹴にしてる。そうだ、兄貴はシスコンだった。いつも私と二人きりで、私手作りのお弁当を食べたいとかなんとか言ってたような……。うん、なんて具体的なんだろう。
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